幸田真音「代行返上」

代行返上

代行返上

まずお話がつまんない。構成はメチャクチャだわ文章は平板だわ、流行りのネタを仕入れまくったお勉強の成果を読むだけ。なんかきいたふうなお説教を垂れ流されてもなあ。由子とか出てくるたんびに性格かわってるし。理美だって、最初は副主人公の扱いが、単に主人公が説明を始めるきっかけづくりのためだけのキャラにされてるし。リョウと主人公の関係も、えらく引っ張ったわりに結末となんも関係ない。人間が描けてるとか描けてないとかいう以前だよね。思わせぶりなエピソードは全部思わせぶりなだけで、最後の最後で無理矢理落ちを説明だけして終わってる。10週で打ち切られたジャンプのマンガかよ。ま、日本の悪口とか読めればいいやって人にはおすすめかもね。 年金基金の現場の描写は妙に生々しいわりに、投資銀行とかヘッジファンドの描写が定型的というか空々しいのは、作者の経歴とか考えると逆じゃないかと思うんだけれど。投資銀行で、商売のネタの電話の会話が開いたドアから丸聞こえなんて、ありえないって。あと、運用では資産配分が重要なんてのは証券投資の教科書の一番最初に書いてあるし、どこの信託の営業資料にだってのってることで、基金の看板常務理事がわざわざ感心するようなことじゃない。っていうか、信託銀行に基金アロケーションを素人考えだの言われたくないよなあ。じゃあえらくゆっくりと後追いで株の期待収益を下げては組み直してる信託の「中期資産配分」はなんなんだ、とか。運用が不案内の基金が株の比率下げたりしてるとしたら、それは総幹事の信託銀行なり生保なりの提案を丸呑みしてるだけなんだろうと思うんだが。でも、代行返上やら年金基金制度のことが読みたきゃ専門の参考書を読めば、と言いたくても、詳しい話はともかくわかりやすい解説ってそうそうないからなあ。お勉強に免じてB+。
あ、これ2003年の雑誌連載だって。構成がなってないのは、単にそん時そん時で株の売りを煽ってただけだったからってこっちゃないのか?