イラク

5月29日付け読売新聞社説 2邦人襲撃]「人質事件の特異さが際だつ」

 戦場や危険地域で、ジャーナリストやカメラマンが死亡するのは、決して珍しいことではない。
 米国に本部を置くジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、戦場取材などの職務で死亡したジャーナリストは昨年、世界で三十六人に上った。うちイラクで死亡したのは十三人だった。
 過去にも、第二次大戦で六十八人、朝鮮戦争で三十八人が死亡した。戦火のインドシナでは、一九四六年からベトナム戦争終結の七五年までに、死亡または行方不明になった報道カメラマンは、百三十数人に上る。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では三十七人が死亡した。

日本軍事情報センター 5月29日の記事

今回のイラクは外国人であれば非戦闘地域でも無差別に襲撃するという異常な状態になっている。これが今までの戦場と最も違う点である。それも物取りなら武装したボディーガードを付ければ防げるが、追い越しざまに撃ってくる様なら普通の警備では足りない。それなら前後の車(ピックアップ・トラック)に武装した兵士を乗せ、いつでも撃てる体制で移動する必要がある。しかしそのような警護を日常的に期待するのはジャーナリストでは無理である。別にアラブ人を装うという方法もあるが、こんどはスパイと疑われる危険を覚悟しなければいけない。
 日本の大手メディアはイラク人を取材に使うという方法をとっているようである。しかしそのような者さえアメリカの手先として襲撃の対象になっているという。外国人ジャーナリストが使う運転手(ガイド)や通訳さえゲリラに狙われている。このようなタイプの戦争は今までになかった。イラクの反米武装勢力はメディアを使い国際世論を味方につけて、戦況や政治交渉を有利にするという発想がまるでない。とにかく外国人を国内から追放するという攘夷論だけである。

要するに珍しいのか、珍しくないのか。
しかし攘夷論を掲げた「ゲリラ」が相手なら、米英の占領軍が国連主導に変わっても事態収拾の糸口にはならないんじゃないのか。