とらドラ! #21 どうしたって

髪飾りをあそこまで吹っ飛ばすって、怪力女はどっちだよ。修羅場でただ一人、宙に舞う髪飾りに引き寄せられて夢中で追いかけてしまう大河の一途さが切ないです。
いやホント、押し入れから出るに出られず聞いてはいけない一部始終を黙って聞いてるしかない竜児たちと一体化して引き込まれてしまいました。冒頭の木原と能登との前哨戦から流れ出す不穏な空気がまた生々しい。竜児や祐作の鈍さにはツッコミが入るけど春田のバカは完全スルーなのがまた……容赦ないよなあ。
みのりんを挑発し続けたあーみん、ついにみのりんも素を出して、そのまま手も出てガチバトル。二人とも仮面をかぶって、素の自分を隠して世間付き合いしてきた点では似た者同士ではある。ただ、そのベクトルが正反対。あーみんは幽霊なんかいないことを「知っている」、みのりんは幽霊なんかいないとわかることを「怖れている」。
ぶりっ子が十八番な川嶋亜美は、腹をわった話し合いをしたいと思うとケンカを売るしかやり方を知らない。でも、彼女は櫛枝から何を引き出したかったんだろう。自分がさみしいかなんて怖くて考えられないと言い、家族ごっこに最初から混ぜてほしかったとつぶやく彼女にとって、自分には望んでも得られないポジションにいながら韜晦を繰り返す櫛枝実乃梨が腹立たしかったんじゃないのか。
「幽霊を見たい」と言い、イブには「幽霊は諦めた」と言った櫛枝は、落ち込んだりしないようにいつも明るく振る舞っている。第2話で聞いた時にはえらくポジティブに思えた信条は、本心を隠し人間関係を決定づけるような選択を避けて逃げ続けるネガティブさを露にしてる。「幽霊」は恋愛感情というより人と人とのポジティブなつながり全般のメタファーで、彼女は自分が他人とそうした関係を築けると思ってないように見える。自分にはそうした関係にふさわしい価値がないと思ってるように見える。だから微温的な関係の維持にこだわって、そんな自分は「ずるくて、卑怯だ」と口走るんじゃないだろうか。
お話の方は、大河が竜児を北村と勘違いしてついに「竜児が好き」と言ってしまったことで、ここまでの葛藤が竜児の中に内面化されることになるわけだけれども、大河と北村の関係ってどうなってるんだろ。もしかして正月にお茶したときに、竜児のことを相談した?事情を聞いた祐作が大河の竜児離れを応援する流れ、というのも考えにくいんだけれども。ただ、竜児がらみの話題だったから、北村も大河も竜児本人にはそのことを話さなかったんだろう。

竹宮ゆゆこって、萌え系というかハーレム系のラブコメが本当に好きなんだろう。だから萌え記号の組合せだけのヒロインが許せないんじゃないだろうか。修羅場につっこんでもドロドロさせないのは、あくまで「とらドラ!」がラブコメだから。