- 作者: 海野つなみ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: コミック
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恋愛関係が先にあって、その後に家事分担とか生活家政の諸問題が発生する、という順番を逆にしたら、シナジー効果でお仕事マンガと恋愛マンガが合体して新ジャンルになった、という感じ。女性マンガでお仕事モノだと恋愛絡むのが普通で、槇村さとる「おいしい関係」とかその絡め方がサイコーで傑作だと思うんだけど、結婚生活を業務として捉えることで、新たな世界を切り開いたわけです。
主人公の妄想癖という設定で、恋愛感情から人間関係、いろいろ分析しまくりますが、派遣切りにあって職探しに苦労してる状況からグローバル経済の進展による先進国内での格差拡大とか、社会問題にも及んで、これが生活者の視点ってやつでしょうか。メンドくさい高齢童貞の自意識の壁をいかに攻略するかみたいなラブコメと、主婦としての職業意識だの小規模な地域経済の活性化だのが同時並行して、それに日経BPだのプレジデントあたりのインタビューにありそうなエピソードが絡まってくる。それで全体をラブコメディとしてまとめ上げる、とかこういうの女性マンガというか、少女マンガのワザだなあ。青年マンガでこういうのできそうな人って、石川雅之とかゆうきまさみとか、かな。
登場キャラも高齢童貞、高齢処女、ゲイ、イケメン、バツイチ子持ちの元ヤンママとか、いろんなタイプが出てきて語りまくります。タイトルとは逆に、みんな逃げないよね。いや、逃げたりするんだけど、そのまま有耶無耶にしたりしないで、後から戻ってきて説明するし。むしろ「分析はウザいけど役に立つ」みたいな。
マンガは巧いと思うけど、正直絵は平板だしそれほどでもないです。女性マンガに多い気がするんだけど、少女マンガの華やかな絵から花とか星とか取り去るとこういう感じになるのかなあ。説明だの分析のところを、ドキュメンタリー番組のパロディにして見せたりとか、読ませる工夫が秀逸で、話の組み立てからキャラの配置から、構成がしっかりしてるからどんどん読ませます。だからマンガのテクニックは巧い。で、話が面白い、ここ大事。
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