つくしあきひと「メイドインアビス」

絶海の孤島で発見された直径1キロの巨大な縦穴「アビス」は、不可思議な力場に満たされていて外部からの観測を拒んでいる。その深さは未だ謎とされている。中では特異な生態系が生じていて、危険な生物が多数生育している一方、未知の文明の産物である貴重な「遺物」が多数発掘される。アビスは多くの探窟家を引き寄せ、穴の周囲に作られた拠点はいつしか穴を取り巻く街となった。しかしアビスの謎と貴重な遺物の魅力に引き寄せられた探窟家を待つ障害は険しい地形や危険な生物だけではない。アビスの中での上方向への移動は、「アビスの呪い」と言われる負荷をもたらす。深度の浅い場所では軽いめまいや吐き気程度で済むが、深く潜るに連れて負荷は重くなり、深刻なダメージを引き起こす。そして深度1万3千メートルより下では、確実な死をもたらすと言われている。
この舞台設定だけでも強烈に惹かれる。話は当然、未踏の地であるアビスの最奥を目指していくわけで、出発したら後戻りできない、進めば進むほど謎も危険も深まっていく。登場キャラも、この秀抜な世界設定に負けない存在感を発揮していて、アビスの中で出会う探窟家はとんでもなくヤバい。主人公は最初ちょっとトロそうな天然系の幼女だと思ってたけど、しっかり物語を背負って展開させるエンジンとなっていて、アビスのことだけを考えてきたその知識と覚悟は全く侮ってはいけない。幾多の危険を乗り越えて進んでいける強さを読者に納得させる説得力を持っている。
ハードでシリアスな世界観を、ちょっとユル目なキャラとエピソードで中和しつつ、壮大な冒険活劇をガンガン進めていく。最近の物語では、テンポが早い方だと思う。キャラも世界設定も、ずっと浸っていたいけれど、ラストまで一気呵成に突っ走ってサクッと終わらせた後で、番外編とかスピンオフとかいっぱい読めるととても嬉しい。
メイドインアビス 1 (バンブーコミックス)
メイドインアビス 2 (バンブーコミックス)
メイドインアビス 3 (バンブーコミックス)
メイドインアビス 4 (バンブーコミックス)