スティーヴン・キング「ファインダーズ・キーパーズ」

「ミスター・メルセデス」に続く「退職刑事ビル・ホッジズ三部作」の2作目。
1978年、田舎で隠棲している老作家の家にモリスとその仲間が押し入り、作家を殺害して金庫から多額の現金と、大量の未発表原稿を奪い去った。老作家は、かつてアメリカ文学の寵児となったベストセラー作家であり、その絶頂期に謎の引退を遂げた伝説の作家ロススティーンであった。そして2010年、家の近くの川岸で13歳の少年ピートは、札束と大量のモレスキンのノートが詰まったトランクを発見した。少年の父親は、前作の事件の被害者の一人で、一家は経済的にも精神的にも危機的状況にあった。ピートは、そのカネが、一家を救う手段になると考えた。
頭の回る少年だったピートは、それなりに善良な両親が、金の出所を怪しまずに受け取るうまい方法を思いつく。それは実際うまくいって、一家は窮状を脱するのだけれど、一家が掴みかけた幸福を確実にするためには、金額が足りなかった。ピートは、特に愛する妹のティナのために、ロススティーンの未発表原稿を金に変える方法を考える。しかしそれは、全然うまくいかなかった。
前作「ミスター・メルセデス」の主人公で、殺人鬼と対決したホッジズは、元ヒキコモリの中年女性ホリーと「ファインダーズ・キーパーズ探偵社」を立ち上げた。前作でコンビを組んだもう一人、大学生のジェロームの妹がティナの親友だったことから、ホッジズはピートのトラブルを解決することになる。
ピートとモリスの話が、交互に語られる。最初、二人の間には32年という時間の隔たりがある。その後モリスは別件で刑務所に入り、二人の距離は遠いままだった。しかし、その距離は急速に縮まっていく。そして、下巻に入り、ホッジズがようやくティナからピートが何やらトラブルを抱えているらしいと聞き及んでいる頃には、二人の距離は危険なほどに近づいていた。そこから先は急展開だ。針の穴に糸を通すようなギリギリの線でクリフハンガーを引っ張ってくれる。
3作目は「End Of Watch」だそうだ。次作に向けての不気味な伏線も張ってあって、今から楽しみすぎる。
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