阿部智里「烏に単は似合わない」(ネタバレ)

烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ (文春文庫)

烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ (文春文庫)

帯に「あなたの予想をきっと裏切る」と書いてある。確かに、予想外だった。考えてみれば本屋大賞とかファンタジーノベル大賞とかじゃなくって松本清張賞だからな。
普段は人の姿をとっている八咫烏の一族が支配する世界で、有力貴族4家からそれぞれ選ばれた妃候補が登殿して、妃の座を争う。語り手となる東家の二の姫は、姉の代わりに急遽登殿が決まった、どこか幼い、のんびりとしたお姫さま。権謀術数渦巻く朝廷で巡らされる様々な思惑やそれによる諍いを何となく宥めていく。よくあるタイプの宮廷陰謀モノかと思いつつ、楽しんで読んでいくと、最後にいきなり「探偵」が現れて、これまでの「事件」の真相が語られる。これまでの叙述が見事にひっくり返る。「意外な犯人」とか「意外な動機」とかはあるけど、「意外な探偵」というのはびっくりだ。「信頼できない語り手」でもある。