ロバート・ロプレスティ「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)

ミステリ作家を探偵役にした短編集コージー・ミステリと言うのかな。
ミステリ作家のシャンクスが、「事件を解決するのは警察だ、ぼくは話をつくるだけ」と言いつつ、日常の謎から殺人事件まで、サクッと推理して見せる。一つ一つのお話は結構短くて、木を隠そうと森の話を始める前にアッサリ解決しちゃうみたいな感じ。探偵が語り手だけれど、「まだ確かめる事が残ってる」みたいな引っ張り方をしないので話が早い。でもネタも趣向もバラエティ豊富で、飽きがこない。何気無い雑談から相手のウソを見抜くとか、所在無く見ていた窓の外の光景から進行中の犯罪に気づくとか、あるいは強盗に遭えば犯人をハメる仕掛けを手間暇かけて作ってみたり、かと思えばフェアプレイな本格推理もあるし、かかってきたサギ電話をからかうだけの話もある。それに何よりブツブツ愚痴ったりヘソを曲げて皮肉ったり、シャンクスのキャラが良い。
そして、いろいろ事件があっても、最後は、自分より売れっ子なロマンス作家の奥さんや、作家仲間との日常に戻っていく。ユーモラスな、ゆるい感じのミステリだけど、ミステリとしてのネタはしっかりしてて、ミステリっぽいキャラ小説とは違う。複雑なトリックとかでもなく、ゆるい読み味に合っていて、なおかつ意外性もある。
翻訳者が企画を売り込んだ本邦初訳の作家だそうです。良い拾い物です。