今村昌弘「屍人荘の殺人」

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

鮎川哲也賞受賞作。大学のミステリ愛好会メンバーが、映研の夏合宿に参加して、殺人事件に遭遇というと王道ですが、予想外の展開に驚かされ、説得力のある解決に繋げる鮮かさに見惚れてしまいました。冒頭にホテルの見取り図があって、警察も手を焼く難事件を解決してきた名探偵が登場して、と本格物の要素を踏襲しつつ、お約束をお約束として流さない、奇想を盛り込みつつもロジカルな娯楽としての本格推理の醍醐味を外さずにきっちり堪能させてくれます。
被害者と容疑者を用意する関係上、ミステリの登場人物は多くなりがちで、2、3人づつ登場させてそれぞれエピソードをつけたりとか印象付けたりするんだけれど、それでもどんどん増えてくると読んでる方もだんだん混乱してきます。登場人物リストを見返しながら読むんですけど、タイミングよく改めて人物紹介がされて、それがまた印象的で、痒い所に手が届くとはこういうことかと思います。
映画化されるそうですけど、宣伝とか始まると不用意なネタバレとかのリスクも高まるし、速攻読んだ方がいいです。