橘由華・藤小豆「聖女の魔力は万能です」

仕事に疲れて帰宅したOL小鳥遊聖(セイ)が、いきなり異世界に聖女として召喚されてしまう。ただ、なぜか同時に二人召喚されてしまい、しかも召喚されたのは一人だけだと勘違いした王子によってセイはその場に置き去りにされてしまう。扱いに困った王宮の人たちから衣食住の世話はされるものの放置されてしまい、手持ち無沙汰なセイは物珍しさから入り込んだ薬草園の研究所でポーション作りを始める。元の世界に帰れるアテもないなら好きなことをしながらのんびり暮らそうかと思うのだけれど、どうやら本当の「聖女」は自分の方らしいと薄々気づいてしまう。面倒事は避けたいと目立たないようにするが、ついついやりすぎてしまい、あれこれと注目されてしまう。主人公は呑気というか肝が太いというか、呼びつけられて放置とか、散々な扱いにキレても、怒ってるのがめんどくさくなっちゃう。それよりポーション作りが面白そうとなるとのめり込んでしまうタイプ。召喚されたもう一人の「聖女」の方がなんか苦労してそうだけど、この子はあんまり出番がない。やたらとしっかりしてそうな、王子の婚約者と主人公と三人での絡みは結構楽しいんだけれど、女子会一回やって終わりなのかなあ。
異世界転生というのは、普通の女の子をイケメン貴族の中に放り込んで少女マンガをさせるのにピッタリな設定だというのを再認識させてくれる。王道だけど、スムーズな展開で、何よりキャラにあざとさが無くて読みやすいし話が面白い。わりとストレスフリー仕様です。原作は「小説家になろう」連載中、コミック版は5巻までで書籍版2巻相当。