香月美夜「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」

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herecy8.hatenablog.com

書籍版が既刊9冊ですが、まだ公開済みのWEB版の1/3程度。ほぼ連日のペースで現在更新中です。
「本に囲まれた生活」という環境をゼロから作り上げるために、製糸業や印刷業を産業として立ち上げ、安価な本を流通させて読者と作者を並行して開拓する。新しい産業を支えるための人材育成に力を注ぎ、教育改革にまで乗り出す、という文化革命みたいなことをやってます。「ルワンダ中央銀行総裁日記」みたいです。
中世ヨーロッパ風の身分制社会で、しかも魔力によって国が成り立ち、神の力が現実の影響力を持っている世界に、21世紀の日本のシステムを持ち込んで行こうとするわけで、両者の違いが物語上の趣向になってるんだけれど、その「異世界」の方も一枚岩ではないんですね。職人社会、商人社会、貴族社会、農村、神殿、それぞれに分離してて常識が違うし、話が大きくなってくると小国の外交と大国の外交の違いとか、とにかく文化の違いにこだわってます。
小説家になろう」で香月美夜さんのページを見ると、本好きシリーズの他に短編が3本公開されていますが、その中で投稿日が最も早い「中秋の名月」がイギリス人から見た日本人の月見の話で、外からの視点で文化を相対化するというあたりで「本好き」に通じるものがあります。必ずしもサイトの掲載順が執筆順と同じかどうかはわかりませんが、早くからこだわっていたテーマなんだと思います。
「本好き」では、魔法と縁遠くて、その分生き方がわかりやすい平民の社会から始めて、各社会を一つずつ丁寧に描きながら、魔力と神の力が動かしている世界のシステムに少しずつ近づいていくから、どうしたって長くなるのは仕方ないんですね。
とりあえず早くシュバルツとヴァイスの絵が見たいです。ひょこひょこ動くぬいぐるみというと、なんか等身大のテディベアみたいなのをイメージしちゃうんだけど、ウサギみたいな魔獣なんですよね。ピーターラビットとかをイメージすればいいんだろうか。