甘岸久弥・住川恵「魔道具師ダリヤはうつむかない」

魔道具師カルロの娘として生まれ、幼い頃から父と魔道具師の修行をしていたダリアには前世の記憶があった。魔道具開発と料理が何より好きなダリヤのラブコメ。なろう発職人系転生モノのマンガ化。前世記憶のチート要素は少なめ。二十数年分の人生経験はそれだけでもアドバンテージではあるけれど、前世知識は一応魔道具開発の発想のヒントにもなったりするけれど、主に料理方面で活用されている。父親が死ぬは、婚約者には裏切られるは、と話の最初の方で不幸が重なるけれど、その後はストレス軽めで、どんどん味方を増やしていく。書籍版は現在5巻まで、WEB版は連載中。細かい生活描写が丁寧で、脇キャラも豊富なので楽しめる。
魔道具開発は、マジカルな製作プロセスはあるけれど、基本は魔物素材の組み合わせなので、素材集めの苦労と試行錯誤でいかに話を回していくかになる。アクションシーンはあっても、サスペンス要素はほとんどない中で、あれこれ困難を設定して飽きさせない。スライムにこだわって探求していくのも面白い。それでも話が続いてくと、だんだん苦しくなってはくるけれど。いわゆるスローライフ系というやつなのか、そもそも大きな目的とか、敵とか、話の最終目標が見えないので、WEB版の先の方はむず痒いラブコメをどこまで楽しめるか、という感じになっていく。とりあえず元婚約者との因縁が決着するあたりまでは、夢中で読める。