「告白」「私がベアリングズ銀行をつぶした」「ベアリングズ崩壊の真実」

告白 (文春文庫)

告白 (文春文庫)

私がベアリングズ銀行をつぶした

私がベアリングズ銀行をつぶした

ベアリングズ崩壊の真実

ベアリングズ崩壊の真実

番外ということで、話題の2冊+1。読み比べてみると面白い。要するにベアリングズにはリスク管理はあっても機能してなかったし、大和銀行には リスク管理なんてなかったという話し。相場に負けて損がふくらんでいくということはどういうことか、当事者が自ら書いたものってそうないから、その意味でも貴重な本です。二人とも似たようなことしてんだけどね、印象はずいぶん違う。「告白」の方は、奥さんには逃げられるし、大雨の中必死で電話連絡したり、けっこう悲惨な話しなんですが、「ベアリング」の方は、酒場で酔っ払ってるとことか家族で遊び歩いてるとこと かエンエンと書いてあったりして。熱海じゃ芸者あげて騒いでるし。やっぱ日本人って損な性分なのかなあ。 3冊めはイギリスのジャーナリストによるドキュメント。やはり読み比べてみると面白い。目の前で百億単位で損が膨らんでいく気分の描写なんて のは、本人の言葉の生々しさには勝てないけれど、本人が書いて自己正当化の部分はない方がおかしいですから。またリーソンには窺い知ることのできなかった事情などもでてきて、銀行が崩壊したあの週末についても、資料をもとに再構成して本書のクライマックスになっています。 イギリスの銀行家というとディズニー映画のメアリーポピンズを思い出すんだけど、まあ実際もあんなもんらしい。ビッグバンなんて言っても、そ れこそナポレオン戦争からこっちなんも変わってないんじゃないの。 著者はオプションのわかりやすい説明に挑戦し、ボラティリティあたりまではけっこう成功してると思うけれど、さすがにデルタだのベガだのが出てくると出すだけ出してほとんどその説明を放棄している。まあ、オプションの解説が目的の本じゃないし、「なにやらややこしいトリックを使う」 という印象を読者に与えることには成功している。でもその労力をちょっとヘンな翻訳がまた空しくしている。「価格内在的な市場の変動率で、日々の価格変動から算出した数字に基づいている。」では知らない人には絶対なんのことやらわからんと思う。読んでて、けっこう細かい単語の訳が気になりました。なんで建玉をたてると取引所から財務諸表が送られてくるんじゃあ。日本の国債富士フィルムワラントがついてるなんて文章もあったし。