ゴーマニズム宣言/小林よしのり

今出てるSAPIO5/12号の205章ですね、イラクの人質事件の話が出てる。右と左の主張の奇妙な倒錯を指摘して、単に相手の主張に反論したいだけの底の浅さを皮肉ってる。これは全くその通りで、党派的な叩き合いでしかない。朝生でも同旨の発言をしてたようで、感想リンクとか回って見逃したのは惜しい回だったかもしれないとか思った。
ただ、観念と実利の二分法には違和感を覚える。そもそも武士道と商人道徳で価値判断をつけて武士道を上に置くというのも承服しがたいところだけれど、実利と観念ってそんなにきれいに分かれないだろう。アメリカの占領に反発するのがレジスタンスなのはたしかだけれど、イラクを焦土と化してもアメリカと刺し違えんばかりの憎悪を煽るのはテロだろう。アメリカが手を引いたら内戦になるしかないような状況で、占領支援反対と言われてもなあ。小林よしのりは日本の先人の事例を引くのが好きなんだけれど、日本史の文脈でいうと、攘夷論を排して開国し、不平等条約に甘んじながらも富国強兵と欧化政策でその撤廃をめざした明治の日本や、ポツダム宣言受諾の玉音放送をもって本土決戦を回避した御聖断を批判し、攘夷と本土決戦を支持するということになりはしないだろうか。
また産經新聞が唱えていたということで「陰謀/自作自演説」を十把ひとからげに否定してたけれど、全体に割り切れなさが残っていることは否定しがたい。
参考リンク:http://amrita.s14.xrea.com/d/?date=20040503#p06