川端裕人「竜とわれらの時代」

竜とわれらの時代 (徳間文庫)

竜とわれらの時代 (徳間文庫)

面白かった、けど長いよ。そりゃ恐竜展の中は見たいし、「それぞれの文化の文脈で恐竜をいかに解釈するか」というテーマに直結してる古生物学の講釈は削れないだろう。旧説を新説が覆す学説論争なんてものを描こうとすればそりゃページがいくらあったって足りないだろう。でも700ページ以上使ったあげくに最後に種明かし的に早足の説明が詰め込まれてるのは物語の構成としてどうよ。原理主義者の抗争、核テロリズムとさんざん煽ったわりには肩すかしな結末で、ドラマとしてはちぐはぐ。
恐竜をキィにして文明の衝突を描くアイデアは非常に面白いんだけど、それを納めるドラマが中途半端。どうもテーマとして描きたい方向性と、ドラマツルギーが要求する方向性が微妙にズレていて、最後でまとめきれなくなってるんじゃないだろうか。どうも川端裕人の小説ってどれもそんな感じがする。解説を描写にわかりやすくおりまぜていく文章力は抜群だと思うんだけれども。
キリスト教福音派の白人もムスリム無宗教のロシア人も最後は日本的アニミズム折伏されてしまうのは日本の小説として正直だなあとは思うけれど、都合よすぎじゃないか。