草野原々「最後にして最初のアイドル」

意識はアイドルによって個人へとダウンロードされる。

デビュー作にして星雲賞受賞もむべなるかな。アクセルベタ踏みでコーナーに突っ込んでくようなバカSF✖️3。表題作は「ラブライブ!」の同人小説をリライトしてハヤカワSFコンテストに応募したもので、最終選考に残ってるのは何かの間違いだろうとか文芸作品として最低レベルとか散々な言われようでも特別賞を受賞、さらには山田正紀「神狩り」以来となるデビュー作にして星雲賞受賞の快挙を成し遂げた。まあ全編悪い冗談みたいなものだけど、次から次へと飛び出すハードSF的展開に引きずり回される思考のドライブ感はまさしくセンスオブワンダーという奴だろう。ちなみに表題作の他、「エヴォリューションがーるず」「暗黒声優」の3編が収録されている。
「最後にして最初のアイドル」は、最初アイドル小説っぽく始まり、どこがSFなんだと不安になるかもしれないが心配ない。すぐにぐちょぐちょのねちょねちょになって、人類が滅亡の危機に晒されたりクラゲが空飛んだりする。「エヴォリューションがーるず」は「「まどマギ」リスペクト。ガチャを回して進化するというのは、割と思いつきやすいネタだけど、料理の仕方がぶっ飛んでる。「暗黒声優」は光の媒体としてエーテルが存在する宇宙の話。声優は、発声管によってエーテルを操作する能力者である。地球が崩壊したり、銀河系中心へのチェイスがあったりと、ワイドスクリーンバロック