瀬名秀明「BRAIN VALLEY」

BRAIN VALLEY(上)

BRAIN VALLEY(上)

  • 作者:瀬名 秀明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/09/30
  • メディア: Kindle
BRAIN VALLEY(下)

BRAIN VALLEY(下)

  • 作者:瀬名 秀明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/09/30
  • メディア: Kindle

前作「パラサイト・イブ」に比べれば格段に楽しめた。前半、分子生理学から認知心理学、コンピューターサイエンスから臨死体験、UFOのアブダクティまで繰り出して、脳の中の「神」を追いつめていく壮大なパズルには興奮した。宗教がキリスト教に偏ってる気がしたけど、それは置いときましょう。テレビ中継の放送手順がやたら細かく書き込まれているのも、むしろワクワク感を盛り上げて効果的だった。でも、北川の最後の大演説で一気に冷めてしまった。こんな思い込みだけの浅薄なおやじが、現代科学の最先端をまとめ上げて推進する中心人物だなんて、そんなのアリ?最後のエピローグは意味不明。宗教に気を使ったんだろうか?
科学者が感情や体感を表現するときに生理学用語がでてくるのはいいんだけど、巫女は瞑想してるときに神経細胞や血管のこととか気にしないんじゃないかなあとか、やたら「ぐわり」だの「ぶわり」だのひらがなのオノマトペが目に付くなあとか、相変わらず描写はうまくないです。いろいろあげてくときりがないからひとつだけ。相手の言葉に反論できずにただ「でたらめだ!」「そんなばかな」と繰り返すのは、なんか安っぽい悪役みたいでかっこ悪いです。
でも、少年は生き生きしてた。妙に頭の中でこねくりまわした感じのうっとおしい大人たちよりよっぽど素直に描かれてる。「八月の博物館」でもそうだったし、瀬名秀明って少年を活躍させるのがいいんじゃないだろうか。