高田崇史「QED 百人一首の呪」

QED 百人一首の呪 (講談社文庫)

QED 百人一首の呪 (講談社文庫)

メフィスト賞を受賞したQEDシリーズの第1作。
百人一首の謎解きと殺人事件の謎解きが平行して進む歴史パズル物。本作には三つの謎がある。百人一首の謎、殺人事件の謎、そしてなぜこれがミステリとして成立するのかという謎である。百人一首の歌を延々と並べて配列を論じている中盤は、正直なところミステリではなく歴史パズルとして書いた方がよかったのではと思わずにはいられない。それが殺人事件の謎解きに入ると、ミステリでなければならなかった必然性が立ち表れてくる。定家の蘊蓄や繰り返される和歌の羅列があくまで伏線で、現代の東京に怨霊や呪を現前させることこそが本題なのだ。
この第三の謎については、文庫版解説で北村薫西澤保彦が論争始めてしまうくらいのネタではあるのだけれど、殺人事件が歴史蘊蓄の付けたりではないという点では一致している。ここで私見を持ち出すのは恐縮してしまうのだけれど、中世風の呪術的な世界観を現代に持ち込んでみせたところが本作の真骨頂なのではないだろうか。
妖怪を呼び出した京極夏彦との対比が面白いと思うんだけれど、とりあえず完成度では京極堂に二歩も三歩も譲ってしまうなあ。