とらドラ! #20 ずっと、このまま

ちんこす、ってくぎみゅーになんてこと言わせるんだ。
横断歩道のシーンとか、ちょっとしたやりとりをていねいな描写で膨らませて、毎回々々見応えありまくり。
悲劇の聖夜祭のあと、竜児はインフルエンザで寝込んでしまいました。年が明けてみると櫛枝はなにもなかったかのように元気だし、大河は竜児に頼らずに生きて行こうと距離を置くようになる。女子は気持ちを切り替えてがんばってるけど、竜児はぐずぐずと引きずって逃げてます。
大河の愛情はいつも一方通行。影から見守る、見守られる距離感がなじむようです。私には竜児が必要なんだ、と大泣きした後は、竜児が幸せになれるように頑張る、となんか変なスイッチが入っちゃったみたいです。竜児とみのりんのために走り回り、竜児に心配かけないように部屋も片付けて、結局竜児のことばかり考えてるんですけどね。せっかく神社で久しぶりに北村と会っても、いきなり拝んで失恋大明神扱いだからなあ。元会長とのガチンコ勝負で、北村のことは憑き物が落ちちゃったんでしょうか。
大河の健気なまでの頑張りを目にして、挙げ句に「信じてる」とまで言われて竜児も奮起せざるをえないんだけど、たしかに娘にハッパかけられてるダメおやじにしか見えないよなあ。
一番描写が少なくてわかりにくいのが櫛枝です。子供の頃は弟と一緒で丸刈りだったとか、高校球児の弟は嫉妬の対象だとか、なんか気になりますね。竜児を強烈に意識してるのは確かなんだけど、横断歩道で大河に図られて竜児と二人で登校するように仕向けられたときの複雑な表情とか見ると、大河といえどもうかつには踏み込んでほしくない領域に関わってるようでもあります。大河の父親の件以来家のことに踏み込めなくなったけれど、敢えてそこに踏み込んで行って大河の生活を建て直した竜児はGJだと言ってましたけれど、最初に大河をよろしく頼むと言って二人をくっつけようとしてたことを思い出せば、櫛枝の目論見通りってことだったんでしょうか。思い返してみると、二人をくっつけようとしてたのは、自分では大河の支えになれないと感じていたからだったようにも思えます。
サブタイトルの「ずっと、このまま」は幽霊なんかいないんだと自分に言い聞かせて恋愛以前の関係に巻き戻そうとする櫛枝の気持ちでしょう。普通のラブコメだと、この幸せの永劫回帰にはまりこんだ主人公を外からつき動かしてやらないといけないわけですけれど、「とらドラ!」では人間関係の中に幾重にも不安定要因が組み込まれていて安定しないんです。「ずっと、このまま」という幻想の共犯関係を担うキャラが、一番わざとらしい櫛枝だけしかいない。どんどん攻撃的になってる川嶋亜美は、主人公にちょっかい出す色気担当じゃなくって関係の欺瞞性を暴き立てるメタな位置に立ってるし、春田は大河と竜児がはなれるや大河にちょっかい出し始めるし。ギャルゲの皮をかぶってるけど、中身はえらく硬派な青春小説というか心理小説の原作を正直にアニメ化しています。しかし気付いたらばかちーはモロにタイガーに肩入れしてるな。
原作7巻で、大河パパのブラックスーツに、やっちゃんが家出の駄賃にギッてきた竜児の祖父の腕時計という竜児の聖夜祭のときのカッコが、娘を幸せにできなかった父親の怨念の塊のような呪いのアイテムだと書かれてたのを読んで物凄く納得しました。