今野敏「蓬萊」

蓬莱 (講談社文庫)

ヒットしたパソコン用シミュレーションゲーム「蓬萊」の開発会社が謎の団体から販売中止を迫られて、社長が脅迫者と戦って謎をあばく。徐福伝説をネタにした壮大なホラ話は面白いと思うけれども、伝奇小説をわざわざ警察小説にしたおかげで面白そうなところは全部オマケになって薄っぺらい悪役とのケンカばかりが続くハメになった。探偵役の推理開陳のために犯人の逮捕前に割り込んでその場でゲームをやり始めるのもけっこうマヌケなクライマックスだが、その推理も伝奇モノネタをもっともらしく語ったあとで今度は自分で身もフタもないつっこみを始めるわけだからどうにも盛り上がるところがない。