乾緑郎「機巧のイヴ」

機巧のイヴ (新潮文庫)

江戸時代っぽい、どこか別の世界を舞台にした、SF時代小説。江戸ならぬ天府を中心とした強力な幕藩体制を敷く将軍家と、女系によって承継される天帝家の確執を背景に、天才的な機巧師釘宮久蔵と人間そっくりな機巧人形伊武を核とした連作短編集ですが、やがて天帝家に纏わる謎をめぐる伝奇スペクタクルに突入していきます。伝奇時代小説にSFガジェットを混ぜ込むセンスが素晴らしく、現実の江戸時代とは少しずつずらしながら概ね時代小説の世界観のうちに収めた上で、そこに発条仕掛けのアンドロイドと言うオーバーテクノロジーを外挿しています。
そびえ立つ楼閣、十三層や五芒星型の御所など、舞台設定もイメージが広がる魅惑の設定で、登場人物も食えない爺さんの隠密元締めだの少女忍者だの立ってるキャラが揃ってるし、これはアニメで見てみたいですね。