上橋菜穂子「獣の奏者」

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (4)完結編

獣の奏者 (4)完結編

最初からいきなり引き込まれて、あとは一気呵成。しっかり組み上げられた世界に浸りながらゆっくり読みたいけれど先へ先へと引っ張られてしまう。一息で読んじゃもったいないんだけど、でも何度でも読み返せる深さがあるので大丈夫。ファンタジーな生き物の生態の謎だったり、種を超えた心の交流だったり、宮廷内の陰謀だったり、忘れられた伝説の謎だっったり、少女の成長物語だったりと、とにかく切り口がいっぱいあって作者のありったけが詰め込まれてるので、いろんな読み方ができる。読むたびに新しい発見がある、上質のファンタジー。ドロドロにもっていかずに、権力を正統化する権威とはなにかとか、世界を破滅させかねない知識の扱いであるとか、大きなテーマにも逃げずに挑んでいくし、とにかく面白い。
最初の二巻は一つの国の中の話、後半の二巻は視点が広がって世界の話になる。主人公エリンとその母親の物語が、後半ではエリンとその息子の物語として受け継がれていくということで空間、世代が広がっていく構成も確か。最初に闘蛇・王獣の二巻で完結させて、後半二巻は後から新たに構想したということだけど、最初っから計算したとしか思えないような完成度。ここまで幅広いテーマを詰め込んで、話の筋は明解だしエピソードを積み上げて語らせてるし、これだけの小説はそうそう読めないから、読まないと損です。