スティーブン・キング「悪霊の島」

悪霊の島 上

悪霊の島 上

悪霊の島 下

帰ってきたモダンホラーの帝王、ということで、クジョーやデッドゾーンを彷彿させるスティーブン・キング久々の直球ホラーです。最後で一気に突き崩すために、前半はひたすら日常描写を積み上げていきます。ここを抜群の筆力で読ませられるからこそ、後半の恐怖の演出が効果をあげられるというもの。キングにとって恐怖というのは、個人的な体験に根ざすトラウマを呼び覚ますものであり、当人にとってなにより大切なものが喪失してしまうという絶望であるわけです。だから、まずその恐怖を引き起こす個人の内面を描写していくことから始めることになります。綿密な内面描写が恐怖という感情の伏線となっているのです。
これまでのキングの小説の素材として、小説を書くという行為そのものが扱われてきたけれど、今回はそれが「絵を描く」という行為になってます。小説だと、小説小説としてそのものを取り込むことができますが、絵だと文章で描写するしかありません。そこはキングなので、読者の想像力を刺激する文章が並ぶわけですけれど、一介の平凡な書生としてはやはりどんな絵なのか見てみたいと思ってしまいます。コンク貝に薔薇が生えてるといわれても、コンク貝ってなに?というとこから始めないといけなかったりすると、特に。→"コンク貝"
絵とホラーというと、映画のサスペリア2とか思い出したりします。