朝井まかて「残り者」

残り者

残り者

幕末、瀬戸際で官軍による総攻撃が回避され、江戸城無血開城となった。皆大慌てで退出していく中、大奥に留まった「残り者」が居た、という話。あっという間に無人になった江戸城の中を歩き回り、どこまでも静まり返った廊下、日が落ちて真の闇に沈んだ大広間とか、取るものも取り敢えず逃げ出していく女たちの混乱の対比とか、とにかく是非見てみたい情景がいっぱい。映画にしたら映えそうだなあ。
大奥とは何より、巨大な官僚機構であり、職住共に抱え込んだ現場であり、女性にとって江戸時代数少ないキャリアの場所であった。それぞれ身分も違い、職場も違う、出会う筈のなかった女たちが、江戸城明け渡しという唯一無二の機会に出会い、それぞれ生い立ちから職業人としての誇りなどあれこれを語り出すという巧みな仕掛けが光る。
もともと雑誌連載で、単行本にするとき加筆修正したとのことだけど、同じ説明が何度も繰り返されるとか連載っぽいとこがまだ残ってる。
朝井まかての「眩」(くらら)については
herecy8.hatenablog.com