紫堂恭子「テラ・インコグニタ」

紫堂恭子のファンタジー最新作。ジェムは大国バブ・イリスから来た5人の部隊に案内人として雇われる。行き先は「荒地の国」と呼ばれる、かつて栄華を誇った巨大な帝国が滅び去った廃墟が残る広大な岩砂漠。今では種々多様な文化・宗教をもつ少数民族が散在し、「荒地の国」に最も詳しい案内人ですら主要な街道を離れると何に出会うのかはわからない。彼等の任務は誘拐された人魚の王子の奪還。しかし、王子は国を捨て、ラバユー族の王女の下へ向かっていた。王子の奪還には成功したが、一行は非協力的な王子を抱え、王女の追跡を逃れて「荒地の国」を横断しなければならない。追っ手は多数、しかも王子は海の半妖で、乾燥した大地では衰弱してしまう。いくつもの困難を抱えつつ、テラ・インコグニタ(未知の大地)を進んでいく。
作者のファンタジーはこれまで魔法要素の強いものが多かったのですが、とりあえず今のところ魔法とかはでてきません。王子は海の半妖で人間ではありませんが、海ではともかく、乾季の砂漠ではできることは人並み以下。未知の荒地に住む人々も、それぞれ独特の文化習俗を持っているようですが、不思議な力があるわけではないようです。戦闘は基本剣での斬り合い。彼我の戦力差はおよそ20倍、正面から当たれば勝ち目はないので、相手の出方を読み合う心理戦を仕掛けることになります。そこに各人の複雑な事情が絡み合ってきます。そして舞台はどちらにとっても未知の荒地の国。作者の新境地が期待できそうです。
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