龍の歯医者 後編 殺戮虫編

自信とは決意だ。野ノ子は自分が龍の歯医者であることに決然として迷いがない。だから常に躊躇わず自分の全てを投げ出す。ベルにとって、彼女は自信に満ち溢れた、正しい世界そのものに見える。彼女が「来い」と力強く手を差し伸べるとき、ベルは自分もまたこの世界で果たすべき役割を与えられたことを知る。だからベルはもう、迷わない。引き金を引けないことを怖れない。ベルは、自分は龍の歯医者ではないと言う。しかし、自分の運命を受け入れて龍の葉の中に戻っていく彼は、やはり龍の歯医者なのだ。
一方で芝名は、人を捨ててまで運命に抗うことを選ぶ。彼女の願いは死んだ恋人に再会することである。芝名にとっての「運命」がなんなのかは、実はよくわからない。彼女もまた、自分の死の場面を見ているはずだが、それはどんな死だったのか。天狗虫と化して戦うこともまた、すでに定められた運命だったのか。あるいは天狗虫と化したことで、運命を書き換えたのか。彼女もまた、運命からは逃れられていないのではないか。
自分の意思だけを以って世界の理に挑戦し続ける彼女を悟堂は「勇敢だな」と評する。彼は、死んだ龍の歯医者を龍の歯へと戻す儀式に怒るベルに対しても「勇敢だな」と言った。悟堂にとって、「死者は龍の歯の向こうに去っていき、還らない」ということが世界の真実なのだ。龍の歯医者は、龍の歯から生まれ、龍の歯の中に戻る。その世界の真実とともに生きてる。だから迷うことがない。

なんか舞城王太郎エヴァンゲリオン、みたいな感じはした。最終兵器が哲学的存在だし。
カーチェイスならぬ乗馬チェイスから複葉機上でのアクションと息もつかせず畳み掛ける後半は目が離せない、と言うか息もできない。前後編を通じて、上下の動きとか、高さのあるアクションが多かったけど、やっぱりそういうのってアニメの真骨頂だと思う。それで盛り上げるだけ盛り上げたアクションの後で、ヒーローの孤独な死とモノローグとか、一気に泣かされたね。そういえば生き残ってた敵国の少年兵、野ノ子を殺す兵士みたいな気がしたけど、そうなのかな。てっきり野ノ子の来たる際は伏線だと思ってたんだけど、使われなかった。もしかして、続編のネタ?
しかし、遠慮会釈もなく大量に虐殺されまくるし、キスシーンはエロいを通り越してグロいし、大丈夫か、NHK。死屍累々たる戦場で、生きてるって楽しいと言っちゃうのもスゴイな。

前編は
herecy8.hatenablog.com