佐藤大輔「エルフと戦車と僕の毎日」

エルフと戦車と僕の毎日 II 我が祖国の名は(上) (カドカワBOOKS)

エルフと戦車と僕の毎日 II 我が祖国の名は(上) (カドカワBOOKS)

エルフと戦車と僕の毎日 II 我が祖国の名は(下) (カドカワBOOKS)

エルフと戦車と僕の毎日 II 我が祖国の名は(下) (カドカワBOOKS)

これは流行りの転生チート物に対抗して書いたのかな。えらく若書きのように思ったけれど、豊富に詰め込まれた時事ネタがそれなりに新しかったりするし、色々調べても最近の作らしい。異世界に転生した高校生が、戦車隊を率いてエルフ独立戦争を戦う話です。第一部は非正規戦はありますが、ほとんど兵站の話で、戦闘に関してはほぼ素人集団なエルフがいかにして武器弾薬を調達し、補給路を確保するかに終始します。独立宣言が発せられた以降の第2部は局地戦がいくつか出てきますが、主人公の急造戦車隊が敵戦車隊とぶつかって初の戦車戦になったところまでで終わりです。ここで多分主人公が大きな障害にぶち当たって、それをいかに乗り越えるかで話が展開してくんじゃないかと思うんですが、ここで終わりなので仕方ありません。とにかく軍隊を促成していく細かな描写は、佐藤大輔ならではでしょう。なんというか、夾雑物が多い感じなんですけど、それでも面白いことは確かです。
「セオリー」と題された文章が冒頭に掲げられ、「戦争をゲーム感覚で捉えることすらできないような奴が平和を語るな。」と宣言しています。和製リベラルや護憲平和主義者とか、いろいろ嫌いなものが多いんだなということはわかるけれど、作中で本題を離れた作者の主張がやたらと出てきて読みにくかったりするので「若書き」と思ったんだけれど、もしかしたら読者サービスの面もあるのかな。絵に描いたようなハーレム展開で、戦争に関係のないところは、ハーレム展開を正当化するような言い訳が延々と連なってます。その辺り、ものすごい「ラノベくさい」小説ですが、これもマーケティングなのかなあ。えらく軽いエロコメと、凄惨な戦場描写が同居してるのも、あまり読みやすいとは思えませんでした。そんなこんなを差っ引いても、突如出現した軍事的空白域が戦場となる描写や、その中で軍隊を編成し、独立戦争に勝利するために必要なことを積み上げていく過程は、掛け値無しに面白いから困ったものです。