クジラの子らは砂上に歌う #1 私たちの大事な世界の全てだった

砂の海を漂白する船「泥クジラ」では、サイミアと呼ばれる念動力のような力を持つが短命なシルシと、力を持たない少数の無印と呼ばれる長命な人たちが暮らしていた。シルシの一人であるチャクロは、半年ぶりに発見した流れ島で、ケガで衰弱した少女と出会い、泥クジラに連れて帰る。名前は無い、と言う少女は、服の縫取りからリコスと呼ばれるようになる。
泥クジラの執行部である長老会は、リコスはアパトイアだから拘束すると言う。しかし、そこに乱入してきたオウニがリコスを連れ去ってしまう。オウニは、「体内モグラ」と呼ばれる懲罰房の常連たちのリーダー格で、強力なサイミアを持つ。狭い泥クジラを捨てて外の世界に行きたい、と公言してはばからないオウニは、リコスとチャクロを強引に引き連れて、リコスの居た流れ島を目指す。
砂の海に浮かぶ泥クジラの絵が堪らなく魅惑的。世界観に思わず引き込まれるけど、でもこれって宮崎駿っぽいかな。
見てて気になったのは、安全とルールのバランス。自然環境でも治安でも、何か危険が大きい環境だとルールも厳しくなるのが普通だと思うんだけれど、この世界はどことなく不穏な感じがする割にルールが緩い感じで、なんかアンバランスな気がした。葬式で泣くなとか、感情を文字で表すなとか、なんか決まりは色々あるみたいだけれど、単なる習慣みたいな扱い。短命とはいえ多数の能力者を少数の無印が始動する体制が安定してるのって、まあ五百人強の小さな所帯だし優しい世界っていうことでもいいんだけど、オウニとかヤンキー軍団みたいなのもいるみたいだし、もうちょっと強面の側面が見えないとバランスが悪いような気がした。まあ初見の感想なんで、次でひっくり返されるかもしれないけれど。