彼方のアストラ

宇宙旅行が身近になった未来、高校の授業の一環として行われる惑星キャンプ。そこではランダムに組み合わされた8人がグループとなり、自然公園となっている惑星で学生だけで5日間生活する。全く安全なはずだったが、主人公たちの前に突然謎の光る物体が出現し、瞬時に5千12光年彼方の宇宙に飛ばされてしまう。軌道上に放置された宇宙船に辛くも避難することはできたが、水も食料も足りず通信手段もない。彼らは故郷まで無事に帰りつけるのか。
キッチリ6巻で完結するSF少年マンガの決定版を原作にした文句のないアニメ化。原作が綿密な構成で大量に伏線張り巡らして、しっかり回収しつつ、広げるだけ広げた風呂敷を、大ネタをぶっ込んで一気に畳んでいく。その後のエピローグも付いてて、なんかもう教科書にでもしたいようなマンガです。登場人物紹介を趣向をこらしながら繰り返したり、その後の展開のための前振りをいくつも組み合わせて、メインプロットに引き込む仕掛けにムダがなさすぎて怖いくらい。
次々と襲いかかるピンチを乗り越えつつ、スパイは誰かみたいな心理戦も交え、最後には世界の謎に迫るという王道活劇。未知の惑星探検、というと意外な環境と驚異の生態系、みたいな興味もあったんだけど、その辺はせいぜいキノコ世界くらいで、あんまり突っ込んでないです。下手にそっち入れると本筋ブレるしね。
チームの中に「敵」が紛れ込んでるらしいけど誰かわからない、というのは結構定番のサスペンスで、アリステア・マクリーンとかよく使ってたよね、ナバロンの要塞とか。でも、このシチュエーションだったら、やっぱり「11人いる!」リスペクトでしょう。11人いるにも、男女両性が未分化状態の異星人が登場するんですよ。一定の年齢以上で、選ばれた個体が男性になる、っていう。王様も両方出てくるし。
アニメも原作を最大限活かして、端折るとこと膨らませるとことうまくバランスをとってる。なんかすごく、幸福なアニメだと思う。
冒頭いきなり宇宙空間に一人で漂ってるアリシアのゼログラビティみたいなシーンから始まって、そっからゆるいギャグアニメにつながった時はどうなるのかと思ったけど、テンポのいい展開に引き込まれていく。アリシアを宇宙船に回収するシーンは、原作だと無事アリシアをキャッチするまでは盛り上げて帰りはサクッと戻ってたけれど、アニメでは戻るとこもサスペンス入れて盛り上げて、後に続くエピソードにしてた。多分、放したワイヤーは運動エネルギーがそのまま残ってるから、暴れて掴めないんだと思う。考証が入ったんじゃないか。