ジョン・スコルジー「終わりなき戦火 老人と宇宙6」

長編第一作の「老人と宇宙」で一躍人気作家になったジョン・スコルジーのシリーズ最新作。ミリタリーSF、というか要するにスペオペだね。地球で75歳以上の老人をリクルートして、バイオテクノロジーの粋を集めたサイボーグ戦士に仕立て上げる。それがコロニー防衛軍。600種以上のエイリアンが相争う宇宙で、人類の植民惑星を守るために、想像を絶する戦いを繰り広げる。
ガチガチのハードアクションが炸裂するシリーズ第一作、第二作は謎と陰謀をめぐるミステリ風味のサスペンスアクション、植民惑星の建設物語の第三作と、一作毎に趣向を凝らして飽きさせない。四作目は、第三作のストーリーを視点を変えて語ったものだが、少女が主人公のヤングアダルト小説でこれまたアニメにしたいほど面白い。
四作目までで、人類とエイリアン連合「コンクラーベ」の戦争の危機を経て一つの「力の均衡」に達することでお話には一旦の区切りがつく。ただしその結果地球とコロニー連合が対立し、人類世界は分裂してしまう。
新兵の補給をもっぱら地球に頼っていたコロニー連合は、兵士の消耗を避けるために外交に注力するようになるが、錯綜する利害の対立から調整は困難を極める。一方、「コンクラーベ」内も内部に不穏な内紛の火種を抱えていて、危うい均衡の上に立っていた宇宙の秩序は、再び総力戦の危機を迎える。五作目は局地的な紛争と挑発行為を交えて高まっていく緊張を独立したエピソードの積み重ねで描いていき、ポリティカルフィクションの要素も強い。そしてコロニー連合と地球、エイリアンの間の緊張を煽る、<均衡>の陰謀を描いたのが六作目の本作である。五作目と六作目で<均衡>篇としてまとまっている。
「脳だけが船に接続され、兵器にされた男の決死の反撃!」と帯のアオリにツボを突かれてしまったんだけれど、際立つストーリーテリングと、常に目先を変えて趣向を凝らすアイデアの妙で、とにかく読み出したら止まらない。

老人と宇宙 (ハヤカワ文庫SF)
遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫SF)
最後の星戦 老人と宇宙3 (ハヤカワ文庫SF)
ゾーイの物語 老人と宇宙4 (ハヤカワ文庫SF)
戦いの虚空 老人と宇宙5 (ハヤカワ文庫SF)
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