香月美夜「本好きの下剋上」第五部女神の化身IX

第5部9巻、通算第30巻。対アーレンスバッハ戦後半、ゲルラッハ戦から中央出兵まで。これまでの話の流れではゲオルギーネがラスボスなんだけれど、ローゼマインにとっての因縁の相手はグラオザムで、直接対決で決着をつけることになる。ゲオルギーネにとってローゼマインはそもそも視野に入ってない、少なくともエーレンフェスト侵攻のトップはゲオルギーネで、供給の間でのジルヴェスターとの直接対決が勝敗を賭けた決戦になるわけだが、ローゼマイン視点では結果を聞かされるだけなので本編では対グラオザム戦勝利で、戦闘終了となる。ただこれまでランツェナーヴェとラオブルートの背景がほとんど語られておらず、戦闘も物語もまだ続く。レッサー君大活躍のグラオザム戦で盛り上がった後はローゼマインのPTSDや静かな鎮魂の夜などが丁寧に語られるのが、本好きの世界。そしてなんといっても、トゥーリやコリンナのいる仮縫いの場で、恋愛妄想を暴走させるハンネローレに追い詰められて逃げ場を失うローゼマインがこの巻の見どころだろう。ある意味ここで墓穴を掘ったわけだが、フェルディナンドの暗躍でどんどん外堀を埋められていったローゼマインが、「絶対にフェルディナンド様を幸せにします」と爆弾発言をするまでの流れは傑作。
プロローグはグラオザム視点、ボニファティウス対策を練って周到に準備していたら、想定外の事態の進行を予感させるダンケルフェルガーの軍勢が目に入るところまで。エピローグはジェルヴァージオ視点、貴族院でのグルトリスハイト入手の経緯。ここでラオブルートの背景が語られる。これで主だった謎の部分は大体明らかになった。後はフェルディナンドがエーレンフェストに来た経緯と、アーレンスバッハ行きを予言した謎の木札の件だけど、これは語られるんだろうか。今なろう連載中の「ハンネローレの貴族院五年生」が多分その辺に絡んでるんだけれど、ハンネローレ視点だから具体的に何があったかまでは出てこないかもしれない。書籍化した時に閑話で付くかなあ。
今回書き下ろしの閑話集「エーレンフェスト防衛戦(後半)」はシャルロッテ「後方を担う者」、レクル「西門の戦い」、ユーディット「残された者」、フロレンツィア「白の塔で」、ジルヴェスター「礎を巡る戦い」、とほぼ主要な戦場を拾っている。戦闘用シュミル強い。北門のヴィルフリートは、まあ、頑張った。シャルロッテ視点、フロレンツィア視点で城の中の様子が大体わかり、主要キャラの動向が一渡り網羅されているのは、サービス満点。フロレンツィアがヴェローニカに決定的な一言を言い放つ場面は、滅多に見せないフロレンツィアの一面を垣間見ることができる。お養母さま、ずっと溜まってたんだねえ。フェルディナンドに下った王命が「アーレンスバッハ次期領主の配偶者となること」であって、ディートリンデが相手として名指しされてたわけではない、という伏線がさりげなく繰り返されていた。第4部8巻で出たきりだから、親切だね。
ドラマCD付属SSはマティアス視点「祝勝会の裏で」、ラウレンツと二人、ぽつぽつと戦闘を振り返りながら想いを語り合う。特典SSはルッツ視点「相変わらずの騒動の原因」。行き先が中央から突然アーレンスバッハに変更になると聞いて大慌てで情報収集に走るルッツ。トゥーリ視点での仮縫い会の話が楽しい。
現在WEB連載636話なので最終話まであと41話、およそ2巻分。


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