GUNSLINGER GIRL

マンガの方の感想のつづき
サイボーグの体と心、というテーマだと例えば石ノ森章太郎サイボーグ009」とか、あるいは平井和正のサイボーグブルースとか、そもそも鉄腕アトムの人間とロボットの葛藤とかから続いてる系譜がある。ガンスリでも、ヘンリエッタが「体が機械の女の子って普通ですか?」と涙ぐんだりするところとか、その流れを引いてるところはある。しかし、それはここでは恋する少女の揺れる心理の演出でしかない。
義体の少女にとって、気が付いたら世界の時間は凍りついてしまっていて、なぜそんなことになったのかはわからないし理解できない。けれども、そんな世界は自分とは関係もないし、自分にとっての楽しみも喜びはとりあえず確かなものとして存在している。無垢で一途なヘンリエッタにとっては、ジョゼに向かう愛情だけが現実だ。一途なのは彼女は他になにも持たないからだし、無垢なのはいくらでも書き換え可能だという意味だ。過去は架空の記憶で、過ぎ去った時間は単に失われるだけ。過去から未来へと流れる時間の連続性が失われていること、生身の身体が機械に置き換わることで時間の流れが意味を失ってしまっていること、それは過去と未来の物語から現在を意味付けするような人間性そのものを不可能にしてしまう。だからガンスリ世界は寂寞としている。