とらドラ! #13 大橋高校文化祭【後編】

手をとりあって、見つめあって、それから飽きるまで回り続ければいいんだ。

とらドラ!
竜児が意地になってまで大河の父親に肩入れしてたのは、大河が父親のもとに帰ってしまうことが喜べない自分を否定したかったから。実乃梨が竜児にマジギレしてたのは、家族の問題二関して大河との間にできてしまった溝を意識したとき、大河の側にいられる竜児に嫉妬したから。そこには大河を傷つけてしまった過去の自分の過ちを竜児に重ねて、自己嫌悪を竜児にぶつけている部分もあったのかもしれない。
一日中ケータイをいじり続けてる大河が、父親を嫌ってるとは全然思えない。たしかにみのりんの言うように、父親が悪く言われるのは嫌いだろう。そして、父親がダメな人間なのも当然わかっていて、だからそんな父親が好きな自分の感情が許せなくて、口では父親の事を罵っていたんだろう。ミスコンでの自棄としか思えない捨て身のアナウンスも、父親への未練を断ち切るために容赦ない現実と向き合うために敢えて自分を追い込んだのだ。そして虎の如く咆哮したり、ボストンバッグに入り込んでみたり、意味の分からないことをしていたけれど、たしかに自分でまた立ち上がったのだ。この試練を乗り越えて獲得したものがあったから、北村と普通にしゃべったり手をとりあったりもできるようになったのだろう。こういった「強さ」を示せるキャラはそうそういない。
ミスコンの舞台上で一人自分と戦い、立ち上がろうとしている大河を見て竜児は思わず駆け寄ろうとするわけだが、ここでなぜか文化祭の福男レース企画が始まってしまう。文化祭を盛り上げるためというより、大河と竜児のドラマを盛り上げるための強引な企画にしか見えないわけだが、実際ムチャクチャ盛り上がってしまった。物凄い形相で手段を選ばず勝ちにいく竜児と、竜児を援護して他走者になんでもありな捨て身の攻撃をしかける櫛枝。一人で大丈夫、と言う大河だけれど、その表情が初めてほころんだのは二人の戦いっぷりを見てからですね。ここでレースに勝った竜児が大河といい雰囲気になれば普通のラブコメなんだけれど、「とらドラ!」では手に手をとって一緒にゴールした竜児とみのりんがむしろいい雰囲気になってるし、大河の手は最後に出てきた北村がとってる。川嶋亜美はちゃっかり、必死になってる竜児を見て「いい男がわかるのがいい女なのよ」みたいな表情してるし。定番な三角関係ネタを使わずに、ストーリー上での各キャラのウェイトをうまくバランスさせてキャラ同士の相対的な関係を保ちながら話を展開させていく。これはすごいと思った。
このエピソードを成立させてるのは「人当たりはいいけどサイッテーな父親」なんだけど、父親側の事情が一切描かれないのは記号的に処理しちゃってるということなのかな。
もうこれで最終回でもいいような話だったけど、2クールなのか。正月に原作読もうと思ったけど、文化祭以降まで読んじゃわないように気をつけないと。