石田衣良「池袋ウェストゲートパーク」

池袋ウェストゲートパーク
お勧め度:A+

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

面白い、けどちょっとヌルいかなあ。収録4編のうち、表題作とエキサイタブルボーイの二つだけならダブルAもあったと思う。表題作「池袋ウェストゲートパーク」は、やまざき貴子がチャンドラーぱくったみたいな話。風俗が新しいからって話も新しいとは限らないというか、新しい革袋に古い酒をいれたというか、これって「さらば愛しき女よ」だろ。「エキサイタブルボーイ」も似たような話で、ヤな女とヤクザの純情がからむとハードボイルドという仕掛け。体言止めを多用し、短い具体的な描写を積み重ねるスタイルは悪くないんだけど、ここでは妙に紋切り型の比喩が目に付いてちとつらい。あとやたらと同窓生ばっか出てくるのはなぜ、とか気になりだしたりするし。でも、ホットとクールが同居して、熱いヤツなんだけどお節介はやかない主人公のバランスが周囲と絶妙にマッチして、けっこう気持ち良く読ませてしまう。後半2作になると、これが同窓会大爆発なんだな。いや、けっこう麻布とかでも地元の小学校とか中学の同窓つながりとかあって、医者だ弁護士だと派手な肩書きが並んだりするみたいだし、リアリティの部分なんかもしれないけど、それでも「礼にい」はないだろう。最後なんか踊る大捜査線じゃんか。ウェストサイド物語かと思ってたら青い体験だったり、その後の仁義なき戦いかと思ってたらミッション・インポッシブルだったりとか、いろいろ意外性に富んでたと思います。