ジャック・キャンベル「彷徨える艦隊5 戦艦リレントレス」

超光速航法はあっても超光速通信はできない、という設定で、結局情報は人が運んで口コミで伝えることになるってのが面白い。超光速航法といっても、決まったところにあるゲートから超空間を通って決まったところに出るだけで、超光速エンジンがあるわけではない。だから5光時離れた敵を発見したら、2日くらいかけて接近してから戦闘する。戦闘空域も数光分の範囲に広がるから、情勢判断にしろ指示連絡にしろすべて到達までのタイムラグを意識しないといけない。このシリーズの一番のミソはこの設定にあるといっていい。
さて、お話はいよいよ佳境にさしかかる。補給は困難で弾薬燃料全てが不足する中、いよいよ敵シンディックの支配域を脱出するところまできたギアリー艦隊。艦隊内部の見えざる敵、謎の異星人の策謀と、敵はシンディック艦隊だけじゃない。さらに、これまでずっと孤立無援で絶望的な状況で戦いつづけてきて、いよいよ助かる可能性が見えてきたところで、かえって怖くなったりとか、帰還後の「英雄」というシンボルをどう扱うのかといった「政治」状況を心配したりと、悩みは尽きない。捕虜収容所内での集団心理の描写とか、戦闘以外の描写の厚みも、巻を追うごとに増してきている。まあ、主人公のラブロマンスは、正直どうでもいいんだけれど。
食料から燃料、武器弾薬は急速に減っていき、戦闘のたびに失われる戦力も勿論補充できない。しかし艦隊情報部は、シンディック側の、新たなる大艦隊動員の兆候をキャッチする。残り全てを賭けた最後の決戦を覚悟して、艦隊はアライアンス陣営へと繋がるゲートがある、アタリア星系に向かう。
味方の星系まで帰れても、まだまだ話は終われないということで、最終巻前でなかなか盛り上がってきてます。主要キャラの一人が、フラグも立てずにいきなり死んじゃうからけっこうびっくりしました。
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