体力が落ちてくると、免疫も弱ってくるのだろうか。日和見感染、というのはちがうのかもしれないが、風邪をひきやすくなったり、細々としたトラブルが続く。右目が充血したのも、その一つだった。
結膜炎、ということで色々また薬をもらうのだが、なかなかこれが治らない。
「悪くはなってない。すごおくゆっくりだけど、良くはなってる」
眼はいつもの担当の先生とは別に、院長先生に診てもらう。眼が専門なのだそうだ。貫禄のある押し出しと、独特の高い声で、いつも同じことを繰り返し言われた。ヘルペスがあって、そのせいもあって、治りが遅いということらしい。
ヘルペスの薬、というのが軟膏で、これは目ん玉に塗るのである。まあ、勿論直接目玉に塗るわけではなく、目頭のとこにすこしだけ出して、眼を閉じさせてしばらくすると、体温で溶けて、涙と一緒に角膜に行き渡るという寸法。ほんの少量で充分なのだが、つい出しすぎて、眼の周りをべとべとにしてしまう。
瞼を上下にを引ん剝かれて、軟膏を眼に入れられるのはネコとしても愉快ではない体験で、その時はけっこう不満そうにしていたが、それでも抵抗するというほどでもなかった。薬を塗り易い体勢というのは決まっていて、膝の上で仰向けにひっくり返して頭を左腕で押し付けるようにして固定する。そうされたら、その次には眼に薬を入れられるのは決まっているのだけれど、その辺りの関連性がぴんとこないようで、いつも実際に薬を入れられるまでは、なんか喜んでるふうだった。莫迦だったのかもしれない。