西牟田靖「本で床は抜けるのか」

本で床は抜けるのか (中公文庫)

本で床は抜けるのか (中公文庫)

本の重さで床が抜けるのではないか、と心配した著者が、1級建築士に相談したり、実際に床を抜いてしまった人に話を聞きに行ったりしながら、大量の蔵書と暮らすとはどういうことなのか探っていくルポルタージュ。蔵書の為にリフォームした人、書庫を建てた人、電子化する人、図書館を作ってしまった人。井上ひさし草森紳一と行った著名人から市井の人まで、様々な蔵書家と、その大量の本の行方を訪ね歩く。
蔵書の電子化については、自炊代行業者へのインタビューも含めて多くのページを割き、一方で狭小物件での書庫についても詳しく紹介している。故人の蔵書整理をする古書店主の話とか、著者自身の引越しや蔵書整理などの実体験もあり、「本と生活」に関わる様々な視点を一渡り騒乱している。蔵書家に関する本はそれなりにあるが、実際に蔵書と生活の両立の必要性に迫られた著者のプラクティカルな視点から様々な問題を総覧した本はなかった気がする。電子書籍と電子化という選択肢に関する検討もあり、読み応えがあった。