古橋秀之「タツモリ家の食卓」

タツモリ家の食卓

タツモリ家の食卓―超生命襲来!! (電撃文庫)

タツモリ家の食卓―超生命襲来!! (電撃文庫)

お勧め度:A+

あとがきによると、ちゃんとウケをねらったとある。たしかに、ねらったようなキャラばかりでてくる。ネコ型宇宙人というと「敵は海賊」のアプロとかいろいろいるけど、水色だったらドラえもんだよなあ。ふにゅふにゅしてて最後に「大丈夫」って言う主人公はCCさくらを男に置き換えたみたいだ。「暢気が宇宙を救う」というテーマ(?)もウケ要素だし、とにかくどっかで見たようなおいしそうなとこだけを盛り込んだって感じなんだけど、それでもそれぞれの要素をうまくいかして組み合わせてる。ギャグや説明の入れ方、描写や緩急のリズムとか気にせず楽しく読めてしまうのはうまいんだと思う。シリーズ第1作ということもあるし、とりあえず次も読んでみようかという気になりました。ただ、話が大きくなると、どうしても組織の人間というものが出てくる。ここでは<アルゴス>のエージェントとかだけど。それがなんか、後ろに組織を背負ってるという感じがあんましないんだよね。最初の方にちょろっと出てくる主人公の両親もそうなんだけど、「大人の世界」のめんどくさいゴタゴタは全部うまく処理して「心配ないよ」って言ってくれる理想の保護者になってる。地球の命運から銀河宇宙を巡る覇権の趨勢から次々ととんでもない事態に主人公が巻き込まれても、あくまで保護された世界の中でのトラブルで、そっから先の「大人の世界」のことはそうした保護者が一方的に担ってくれる仕組みになっている。「タツモリ家」世界をこわさずにそのまま広げていけるのかどうかは、これを読んだだけじゃわからないです。