V.I.ウォーショースキー・シリーズ第18作目。シカゴの女探偵が初めて、自分の縄張りを離れて、愛犬ぺピーと共に
カンザス州で単独捜査に乗り出す。前作で登場したバーニーが持ち込んで来た案件は失踪した黒人青年の捜索だった。わずかな手がかりを手繰っていくと、どうやら彼は老女優とともに
カンザスに映画撮影に出掛けて、消息を絶ったらしいことがわかる。失踪した青年の足取りを追って行くと、核
軍縮で撤去されたかつてのミサイル基地にたどり着く。慣れない土地で他所者の探偵としてあちこち嗅ぎ回るうちに、ミサイル配備反対運動のあった1983年に全て繋がっていることに気付くのだった。どうやら軍が絡んだ不祥事の匂いが漂ってきて、シリーズ最大級の陰謀というキャッチコピーは伊達じゃない。
愛すべき隣人コントレーラス老人はカリブにバカンスに行ってしまい、恋人のジェイクはスイスで演奏中、そしてヴィクは
カンザスで孤軍奮闘と今回はいつも周りで支えてくれる友人たちが離れ離れになっている。感情面のサポートはもっぱらぺピーに頼ることになるのだけれど、ぺピーはそれだけじゃない活躍もしてくれる。一方前作で絶体絶命の危機からヴィクを救ったジェイクは、それでビビっちゃったみたいで、ギクシャクしてる。なんかパートナーに恵まれないねえ。
パレツキー自身がカンザスで育ったということもあって、ウォーショースキー・シリーズ以外の数少ない長編小説の一つがカンザスを舞台にした「ブラッディ・カンザス」である。これも面白い小説なので、おすすめ。