シリア人の父とフランス人の母の間にパリで生まれた作者の自伝マンガ。1巻は6才(
1984年)まで。フランスで博士号をとった父は職を探して
リビアに行き、フランスに戻り、それからシリアに行く。フランスのバンデシネっぽい、日本のマンガとは異なる絵柄で、格別ドラマチックなわけではない異国の日常が描かれる。一貫したストーリーラインがあるわけではないことと、子供の目線が中心で両親の事情が細かく描写はされないことで、強く感情移入が促されるということもなく淡々とした印象。同じアラブ人マンガでも、日本人の視点が意識されている「サトコとナダ」は異文化との
接触や受容、共存というモチーフがわかりやすい。それに対して本書は、どうしても接点がわかりにくく、奇妙な
異世界の奇妙な人たち、といった感想が強くなる。ナマなアラブ世界に触れる戸惑い、ということなのかもしれない。
巻末の解説で、おおよその時代背景は説明されている。ちょうど
イラン革命とイライラ戦争の頃の話である。