天気の子

「君の名は」に続く新海誠メジャー作品。連日満員で滑り出し絶好調の模様。賛否両論らしいけど、私は面白かった。以下ネタばれ込みです。

込み入った設定が消化不良な感じが微妙にモニョった「君の名は」よりはよほど気持ちよく見ることができた。伏線っぽい思わせぶりはいくつかあったけど、潔いまでに何の説明もなしで突っ走っていく流れに乗っかって只物語に浸っていられた。
美麗な作画にはますます磨きがかかり、新宿歌舞伎町の毒々しい夜景や薄汚れた路地、鉄道線路脇の殺風景な坂道、何の変哲も無い住宅街の安アパート等などの風景を魅力的に見せてくれる。「耳をすませば」で古い団地を輝かせたアニメの魔法だね。ただ、「言の葉の庭」でも気になったんだけど、繊細な風景描写のカットで、似たような構図の似たようなカットが繰り返されて、あれってバンクなのかな。自然の動きを追求したいモチベーションのベクトルとバンクってなんか噛み合わない気がして違和感あるんだけど、気のせいなのかなあ。晴れてる時に手をかざして見る空のカットが繰り返されるのは意図的なんだとわかるけど。
プロダクト・プレイスメントもバリバリで、盛り場でよく見るバニラの求人カーから学研ムー、日用品も実在ブランドだし、初代プリキュアまで出てくるし。西武新宿のマクドナルドは行ってみたくなるかもしれないが、路地裏のゴミ箱にBOSSとか書いてあるのは宣伝になってるのか?そういえば最近本屋で村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」が平積みになってるのをよく見る気がするけど、天気の子の影響かなあ。別に小説版天気の子とかと一緒に置いてあるわけでもないし、関連本扱いはされてないっぽいんだけど。閑話休題
エピソードの積み重ねをダイジェストで飛ばしていく手法は「君の名は」と同様だけど、今回はあまり気にならなかった。「君の名は」では、そこが見たかったのに的なモヤモヤがあったけど、まあむしろそういうのは少なくて、テンポ良く話を進めていく定番ではある。
中盤以降、天気がいよいよ異常担っていく中、主人公の帆高たちは警察に追われ行き場を失って逃げ回るのはニューシネマみたい。「俺たちに明日はない」とか、社会と対立した個人が束の間の疑似家族を構成するみたいな話、だいたい最後は悲劇に終わってたんだけれど、「天気の子」は世界の方がひっくり返ってしまった。東京が沈むラストが腑に落ちない向きもあるらしいけど、別にいいじゃん。ゴブリンスレイヤー だって「俺は世界を救わない」って言ってるし、世界を救わない主人公だって構わないじゃん。
「少年はいつも動かない。世界ばかりが沈んでいくんだ。」野田秀樹「センダ城の虜」
そういえば小野不由美「東亰異聞」のラストも東京ならぬ東亰が海に沈んでくんだった。

東亰異聞 (新潮文庫)

東亰異聞 (新潮文庫)

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