虚構推理

本格ミステリ大賞受賞の小説がマンガ化され、アニメになりました。小説もマンガもそれぞれに面白くて、アニメもやっぱり面白い。すごい。
まあとにかく1話のツカミが強烈です。妖怪たちの知恵の神となったという岩永琴子の「可憐にして苛烈」なキャラの立ち方もすごいし、相手役となる「山羊のような」大学生桜川九郎の琴子に負けない立たせ方もすごい。
2話は池のヌシの大蛇の話になるんですね。しばらく短編をやって、後半鋼人七瀬やるのかな。
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映像研には手を出すな!

今期1番の期待作。動かす事で魅力を発揮する絵です。
女子高生3人が部活でアニメ作る話、なんだけど、日常系ともお仕事系とも違う、アタマん中の妄想が絵になり、動き出すというアニメの楽しさを前面に押し出したアニメ。なんか動く絵を見てるだけで爽快になれます。
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スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け

スター・ウォーズ・サーガeposode9、完結編です。第1作が1977年だから2019年公開で42年、まさか半世紀近くかけて完結するとは思わなかったなあ。最後は惑星タトゥイーンの二重太陽が出て、なかなか感慨無量でした。面白かったですよ。「長い」と言われてたけど気にならなかったし。洞窟の中ででかいヘビが出てくるのって、第1作のゴミ溜めのシーンをオマージュしてるのかな。これまでのシリーズをリスペクトするようなシーンが色々あって、しっかり「完結編」してました。レイはえらいカッコよかった。なんかもう剣豪みたいになってて、突っ込んでくるタイファイターをライトセーバーで切り捨てるとこなんて、石川五右衛門みたいだよ。フィンはエピソードごとに違う女の子と仲良くなるんだよね。ポーの昔馴染みの女みたいのまで出てきて、なんでみんな急にカップルにしようとしてるんだとか思った。でもその彼女がまたえらくカッコいいんだ。まあ女性キャラは軒並みカッコいいです。男性キャラは、まあ、なんとか。カイロ・レンはトップになってものっぺりしてるし。
しかし、詰め込みすぎというか、特に前半は総集編かよ、というくらい大変なことになってました。パンフのシノプシス読んで初めて話がわかるとか。まあ本編に出てこない細かい設定がいっぱい、というのは前からだって部分はあるけど。デススターの残骸のシーンは、怖いくらいに迫力ある絵で気に入った。でも、コピペで画面埋めましたみたいな大艦隊はどうかと思う。
「俺の宇宙では音が鳴るんだ」くらいは愛嬌だと思うけど、なんかひっくり返って、音が聞こえるんなら空気もあるだろ、とかなってませんか。もしかして、最後のバトルシーンって、大気圏内?なんかもう清々しいくらいに誰も真空のことなんか気にしてない。シールド内は空気があるとか、そういう設定なの?考えてみればスターデストロイヤーの発着口とか開けっ放しで気密もクソもなかったような。
しかし、去年は十二国記も出たし、今年はエヴァの新劇場版やるし、なんか色々一区切りという時期なんですかね。

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アニメ「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」

「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」 Blu-ray BOX

「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」 Blu-ray BOX

  • 出版社/メーカー: フライングドッグ
  • 発売日: 2019/12/27
  • メディア: Blu-ray
最終話放送と競うようにしてBOXが届くとか、地上波で1週遅れだとむしろ先に円盤で見ちゃうとか、なんか不思議。
アニメは当初から2クール予定だったそうで、一部と二部のあいだに間が空く方が想定外だったらしい。14話に兵士の娘3冊分を詰め込んだわけだけれど、第二部って第一部より長いんだよね。少なくとも記憶を覗くとこまではやるだろうけど、それでちょうど半分くらい。そこまででも神殿の新キャラのエピソードがそれぞれあって、孤児院改革にイタリアンレストランにルッツの家出、インク、印刷、星祭りにトロンベ討伐とイベントがいっぱい。そっから第二部最後までだと、金属活字や祈念式の襲撃、カミユとディルク、そして最後のクライマックスまでややこしい話もどんどん出てくる。第一部でも既得権益との衝突とかも詰め込んでたし、要素は全部漏らさない感じだけど。残り12話で果たしてどこまでやるのか、ドキドキです。フェシュピールは当然出てくると思うけど、神官長に贈った問題の曲はどうなるんだろう。アンパンマン使えるんだろうか。
第1話オーディオコメンタリーには香月美夜鈴華が参加してます、オーディオコメンタリーで原作者参加ってのはあまり聞いたことがない。香月さんって関西弁なんですね。同梱の解説書も162pでなんかそのままムックになりそうな。原作者、監督、脚本、美術監督などのインタビューから設定資料、背景美術とかコメント付きで豊富だし原画集まであるし。
さらにTOブックス特典ではエンドカードのイラストカードと、書き下ろしSSと香月美夜と担当編集の対談までついてくる。SSはトゥーリ視点の、神殿に呼び出された夜の話、これはアニメでやった分の「原作」ということかな。対談はアニメ化作業の裏事情という感じで、えらく面白かった。とにかく香月美夜には本好き世界の細かい詳細に到るまで確固としたイメージがある、という話で、コミック化が先行していて、絵にするということが初めてではなかったとはいえ、確かにふぁんぶっくのQ&Aでえらく細かな質問にも理路整然と解凍しまくってるからな。登場キャラの各人に自在に視点を移して語れる、膨大なSS集も、その証左だと思う。

阿部智里「烏に単は似合わない」(ネタバレ)

烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ (文春文庫)

烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ (文春文庫)

帯に「あなたの予想をきっと裏切る」と書いてある。確かに、予想外だった。考えてみれば本屋大賞とかファンタジーノベル大賞とかじゃなくって松本清張賞だからな。
普段は人の姿をとっている八咫烏の一族が支配する世界で、有力貴族4家からそれぞれ選ばれた妃候補が登殿して、妃の座を争う。語り手となる東家の二の姫は、姉の代わりに急遽登殿が決まった、どこか幼い、のんびりとしたお姫さま。権謀術数渦巻く朝廷で巡らされる様々な思惑やそれによる諍いを何となく宥めていく。よくあるタイプの宮廷陰謀モノかと思いつつ、楽しんで読んでいくと、最後にいきなり「探偵」が現れて、これまでの「事件」の真相が語られる。これまでの叙述が見事にひっくり返る。「意外な犯人」とか「意外な動機」とかはあるけど、「意外な探偵」というのはびっくりだ。「信頼できない語り手」でもある。

佐藤正午「月の満ち欠け」

岩波文庫的 月の満ち欠け

岩波文庫的 月の満ち欠け

「あたしは、月のように死んで、生まれ変わる」
生まれ変わりの話です。直木賞受賞作。樹木のように死んで種子を残すのではなく、満ちては欠ける月のように生と死を繰り返す。恋人を追って何度も転生を繰り返す女性の物語、というとロマンチックな純愛なんですが、一つ仕掛けが入ってます。生まれ変わる、ということは別の誰かの娘として生まれるということです。また次に生まれ変われば、やはりまた別の誰かの娘となります。その生と死のサイクルの中で「父親」であった男が、「自分の娘があなたを前世の父親だと言っている」と言う、別の「親」と対面する話として語られます。
主人公は小山内堅、事故で妻と娘を亡くした寡です。彼は、自分の娘が別の女性の生まれ変わりであり、死後また生まれ変わりを続けて別の娘となっている、という話に、ある意味振り回され、彼の現実をほんの少し、思いもかけぬ形で揺るがせます。彼は「生まれ変わり」などということは信じないまま、律儀に付き合っているわけですが、それでも彼の周りを取り巻く現実世界を見る目は、ほんの少しばかり、でも決定的に、変化してしまうのです。
転生を繰り返す女性の視点、生まれ変わりをどう受け止めたのか、なにを考え、そしてかつての恋人に会うためにどう計画したのか、といったことは間接的にしか語られません。他人の目で語られるいくつかの事件や思い出が示唆するまでです。それで十分なのですけれど、最後にボーナストラックのように女性視点のエピソードが入ってます。

岩波書店から出てる文庫で、岩波文庫みたいな装丁ですが、あくまで「岩波文庫的」だそうです。古典じゃないから、だそうですけれども。

「ドクター・スリープ」

「シャイニング」の続編。オーバールックホテルの惨劇から40年後の物語。スティーヴン・キングの小説の映画化。
そもそも「シャイニング」にしてからが、キングの原作小説とキューブリックの映画と、最後の終わり方を含めていろいろ違いがある。キングは当然小説版の続編を書いているわけだけれども、キングの原作、キューブリックの映画、両方をリスペクトして、しっかり「続編」として成立させている。しかし、パンフ買ったら半分くらい「シャイニング」の話が書いてあるし、みんなキューブリックの「シャイニング」が好き過ぎる。
キューブリックの映画は異常心理にウェイトが偏ってて超自然的存在の意味が軽いという点がキングとして不満だったのだが、続編の本作は超自然的存在に重心を置いたことでバランスをとったのだろうか。原作小説の方はダニーのアルコール依存症との戦いがむしろメインくらいの勢いなんだけれど、映画では父との相克に統合されている。原作小説からはいろいろと改変してるけど、キューブリック版を酷評していたキングもこっちは気に入ったみたい。とりあえず好意的なコメントをしている。
レベッカ・ファーガソンのローズ・ザ・ハットはなかなか魅力的な悪役だし、怖いシーンはしっかり怖いし、面白い映画だった。「シャイニング」が好きなら見て損はない。
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