香月美夜「本好きの下剋上」第四部貴族院の自称図書委員IX

第4部第9巻、通算第21巻。第四部ラスト、いよいよ次は最終章です。やっぱ全30巻かな。アーレンスバッハへの婿入りが決まったフェルディナンドの業務引き継ぎと結婚準備で慌ただしく過ぎていく中で、更に聖典盗難事件も起こって不穏な気配がますます昂まります。第二部最後の祝福シーンも万感迫るものがありましたが、第四部最後の全属性の祝福シーンも屈指の名場面です。フェルディナンドがいなくなった後のローゼマインを支えるのがヴィルフリートだ、と脇の人間はみんな言うんだけれど、肝心のヴィルフリート自身は全く登場してない、という影の薄さが厳しい。
プロローグはフロレンツィア視点、シャルロッテがヴィルフリートの愚痴をこぼします。ローゼマイン視点の本編だと目立たないけれど、他の視点のエピソードだと、シャルロッテはかなりヴィルフリートに当たりが厳しい。エピローグはフェルディナンド視点。基本的にはWEB版の閑話「ゲドゥルリーヒとの別れ」ですが少し伸びて、ディートリンデと会うところまで書かれています。フェルディナンドが父親の最期を看取った時の記憶が挿入されてますが、フェルディナンドは父親に名捧げしてたみたいです。そんな話はこれまで読んだことなかったと思うんだけれど。これは伏線として回収されるのかな。リヒャルダ視点とフラン視点の書き下ろし短編が付きます。リヒャルダとユストクス親子の会話というのは珍しいですね。フラン視点は神殿の側仕え達によるフェルディナンドの思い出話。他にも他者視点のエピソード集がついてます。そしてドラマCDについてくる書き下ろし短編はフェルディナンド視点で虹色魔石髪飾りを準備する話。フェルディナンド視点はネタバレになりやすいから、なかなか書きずらそうで、貴重です。更に特典SSとして、ギュンター視点で、灰色神官誘拐の時の話。全体としても、様々な視点のエピソードが満載となっているため、より一層話の膨らみが感じられます。フェルディナンドがエーレンフェストを離れるイベントがメインですが、その裏で密かに粛清の計画が進行していく訳ですし、一方下町では見事に本への想いを受け継いだカミルのエピソードもあるわけです。こういう受け継がれていく想い、みたいな話は結構好き。
しかし、アニメで一部やってて、コミック版が二部と三部と同時展開してて、書籍版が四部と、スゴイ並列進行。

【合本版 第一部】本好きの下剋上(全3巻) 本好きの下剋上(合本版) (TOブックスラノベ)
【合本版 第二部】本好きの下剋上(全4巻) 本好きの下剋上(合本版) (TOブックスラノベ)
【合本版 第三部】本好きの下剋上(全5巻) 本好きの下剋上(合本版) (TOブックスラノベ)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員I」 (TOブックスラノベ)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員II」 (TOブックスラノベ)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員III」
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員IV」
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員V」
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部「貴族院の自称図書委員VI」 (TOブックスラノベ)
香月美夜「本好きの下剋上」第四部貴族院の自称図書委員 - ねこまくら
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香月美夜「本好きの下克上」 - ねこまくら第一部兵士の娘
香月美夜「本好きの下剋上」第三部領主の養女 - ねこまくら第三部領主の養女3
香月美夜「本好きの下剋上」第三部領主の養女 4 - ねこまくら第三部領主の養女4
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[香月美夜・波野涼「本好きの下剋上」第三部 - ねこまくら
香月美夜・鈴華「本好きの下剋上」 - ねこまくら
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本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません ふぁんぶっく2 - ねこまくら
香月美夜「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」ふぁんぶっく - ねこまくら
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浅羽宏「ネコもよう図鑑」

ネコもよう図鑑: 色や柄がちがうのはニャンで?

ネコもよう図鑑: 色や柄がちがうのはニャンで?

  • 作者:浅羽 宏
  • 出版社/メーカー: 化学同人
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
ネコの写真集は山ほどあるし、いろんなネコの種類を集めた本もいくらだってあるけど、茶ブチだのキジ三毛だの模様の解説付きの写真集というのは見たことなかったので思わず購入。ネコの毛色と配置でどんな模様になるかということを、遺伝子型に遡って解説してる。ネコ写真もいっぱいだし、これは買うっきゃないでしょ。
ネコの毛色は基本4種類、白と茶と黒とアグチ。アグチ毛というのは根元と先端が黒で中間が茶色というように、色が交互になっている毛のこと。全身アグチ毛だと、キジネコになります。黒い筋が入るのが普通で、トラネコとかサバジマとか呼ばれます。茶色一色のネコも濃淡の縞模様が出ることが多く、茶トラと呼ばれます。
黒、茶、アグチに白が混ざると、それぞれ黒ブチ、茶ブチ、キジブチになります。黒と茶は黒二毛またはサビネコ、アグチと茶はキジ二毛です。白、黒、茶は黒三毛、白、アグチ、茶はキジ三毛です。二毛と三毛はメスしかいません。
ネコの模様を決める遺伝子については、主な8種類について解説しています。例えば優勢のW遺伝子は全ての毛を白毛にします。有色になるのは劣性ホモ接合のww遺伝子のみを持つ場合に限ります。一方ブチや三毛のように白と他の色の組み合わせを作るのはS遺伝子です。詳しくは本書を参照してください。読んで勉強すれば、街で見かけるネコの遺伝子型もわかるようになりますよ。

公式コミックアンソロジー「本好きの下剋上」

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 公式コミックアンソロジー  第3巻

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 公式コミックアンソロジー 第3巻

早くも第3集。これまでで一番面白かった気がする。神官長ネタが多いですね。フェシュピールがらみが4本入ってるし。それ以外でも二人の掛け合いが存分に楽しめます。2集とかと被ってるネタもあったりするのは、みんな似たようなこと考えるんだなという感じだけど、色々アイデアを入れてネタをドンドン転がして行ってそれでも「本編」からアサッテの方向に離れ過ぎいていかない微妙なさじ加減がきいてる。

泉仁優一「ヤオチの乱」3

ヤオチノ乱(3) (コミックDAYSコミックス)

ヤオチノ乱(3) (コミックDAYSコミックス)

知略と諜報に生きる現代の忍び、八百蜘一族の選抜試験に合格したキリネとシンヤは正式に宗家に迎え入れられる。即座にCIAとの機密の奪い合いになだれ込む。
上野駅近辺で逃亡中のスパイが隠したファイルを発見し、確保する。エシェロン、偵察用無人機を繰り出すCIAを相手に、機密ファイルを巡って白昼の雑踏の中で人知れず繰り広げられるスパイ戦。コミックス1冊分フルに堪能できる。とにかくカッコいいから見て!
でも、全三巻で完結なのね。シンヤ君のナゾとか伏線ゼンゼン回収されてないし、もっと続くと思ったんだけど。打ち切りなのかな、勿体無い。

ヤオチノ乱(1) (コミックDAYSコミックス)

ヤオチノ乱(1) (コミックDAYSコミックス)

ヤオチノ乱(2) (コミックDAYSコミックス)

ヤオチノ乱(2) (コミックDAYSコミックス)

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ターミネーター:ニュー・フェイト

キャメロンが制作陣に復帰して仕切り直し、T2の直接の続編を作るという触れ込みの本作。地雷臭ありつつもとりあえず見に行った。
スカイネットは消えたけど、やっぱり別の敵が現れて未来からターミネータを送り込んでくる。冒頭でいきなりジョン・コナーも殺されちゃうし、続編と銘打ちながら初手から思いっきりちゃぶ台ひっくり返してる。同じ構造の話を装いを変えて何度でもやろうという、プリキュア方式かな。未来から来る人類の味方は女性の強化兵士だし、サラ・コナーは婆さんになっても人間兵器だし、戦闘美少女というよりはバトルウーマンというべきだけど。いきなり現れて問答無用でぶっ放してくるサラ・コナーはイカしてた。シュワちゃんは人間に混じってずっと暮らして人間臭くなったという設定なので、T2の独特なユーモアはなくなってしまった。サラにとってはジョンを殺した仇だけれど、未来からの敵ターミネーターと戦うためにやむなく共同戦線を張る。仇敵同士が協力せざるを得なくなる流れって、バディもののパターンの一つではある。敵の目標がメキシコ女性で、敵ターミネーターに追っかけられてアメリカに密入国しようとしたり、収容所でバトルになったりというあたりは今風だね。
しかし敵はまた液体金属なのね。墜落中の飛行機の中でのバトルとか見応えあったし、テンション切れずに最後まで面白かったけど、二番煎じ感は拭えないなあ。
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小野不由美「白銀の墟 玄の月」

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫
白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫

1991年、平成3年「魔性の子」から28年、ついに泰麒の物語が一つの区切りを迎えた。作者インタビューによれば、「魔性の子」執筆当時の構想ほぼそのまま書き終えたとの事である。実際、今「魔性の子」を読み返してもほぼ矛盾点が見当たらない。唯一気がついたのは最終盤、泰麒が全てを思い出したシーンで白汕子は「廉麟が遣わした人妖」と言ってるけど、それは最初の「神隠し」の時のことで、今回は鳴蝕の時点から着いてきてるから説明としては違和感がある。まあ矛盾ということはないか。しかし、十二国の設定を全部組み立てて、それでまず「魔性の子」から書き始める、というところがそもそもすごいと思う。
それにしても文庫本三巻と半分丸々かけて引っ張ったというか溜めに溜めたよねえ。四巻を中盤も過ぎて、これまで積み上げてきたものを一気に全てひっくり返してきたときにはどうなるかと思った。クライマックスから後は一気呵成で、見事な逆転劇は爽快。でも一番すごかったのは落盤で埋まった地下の坑道から自力で出てきちゃった驍宗だけど。ただ結局琅燦がどうなったのかはわからないままなのが後を引く。
阿選は琅燦に唆されたようなことを言っていて、実際妖魔を調達してきたのは琅燦だろうし、「天意を動かさない」ことで阿選の天下を維持するという理屈を理解できてるのは朝廷内で琅燦だけのように見える以上琅燦の策ではないかと思われる。まあ阿選が思いついたのを琅燦が支持した、という可能性もあるが、どうにも琅燦が黒幕くさく見える。一方で玄管として情報を反政府勢力に流し、耶利の主人として泰麒を支援し、戴を救い驍宗を王と戴きたいと言う。裏切り者のフリをして敵陣営内に潜入してるみたいでもある。どうも真意がよくわからない。琅燦が張運らを相手に説明してるのは、多分に泰麒支援のための詭弁っぽいけど、琅燦に天意を試す意図はあったように思う。「天意」の隙をついて世界の仕組みを試したかったというハッカー気質はあるんだろうけれど、戴全土を巻き添えにして単に実験したかったでは通らない。少なくとも李斎は納得しないだろう。それに対して泰麒は、王を選べるのは麒麟だけ、という仕組みを利用して謀る一方、「麒麟は慈悲の塊で血を厭う」とか「自身の主人である王以外には叩頭しない」とかいった天の理を、意志の力で乗り越えて天の秩序を復元させた。そう考えるとルールの隙を突こうとする琅燦と意志の力で乗り越えようとする泰麒、ルールを巡って好対照となっている。
麒麟は天意の具現化であるのだから、麒麟が天意を示せば他は疑いようが無い。十二国記の世界では「天意」とはすなわち正義であるのだけれど、それは個人が期待するような、諸事情を勘案し因果応報を保証するようなものではなくて、教条的に作用するルールのようなもの。というより、予め社会秩序がビルトインされた世界として十二国の世界が存在する。麒麟は本来そうした秩序と不可分の存在のはずだった。だが胎果である泰麒にとって、天意は必ずしも自明ではなかった。獣としての自分を自覚できず、転変することもできなかった経験が、泰麒に十二国システムとの距離感をもたらしている。
そこに、「角を失った」ことがどれほど影響しているのかはわからない。最後に転変して、角が再生したことが示されるが、どの時点で癒えたのかは不明である。驍宗の目と見合った時かもしれないが、琅燦の言う通り前から再生していたのを隠していたのかもしれない。実は気になる記述があって、2巻159p、言を左右して逃げる士遜を問い詰めた泰麒が不意に立ちくらみをして膝をつくのだが、これがなんだったのかは一切説明されていない。なにか再生の兆候らしきものを探すとこのくらいしか見当たらないのだが、その後関連するような描写は無い。
最後の顛末が漢文の書き下し文風になるのは恒例だけど、ラストシーンでは泰麒も驍宗も療養中だし、項梁、去思、園糸と脇キャラのエピソードで終わる。一巻のはじめに登場した人物たちに話が戻るわけだが、十二国記の他の長編は最後主要人物のエピソードで終わっていて読後感が随分と違う。
登場人物の多くが死んでいったけれど、死に際の描写が詳しかったのは飛燕と酆都、朽桟くらいか。どこでどう死んだのかもわからない、というのが戦場のリアリティではあるんだろうけれど。死に際はキャラの花道だ、といってたのは藤田和日郎だっけ。キャラクター小説とは違う作りになってるということか。むしろ個人を飲み込んで滔々と流れる歴史を描いたのか。「戦争と平和」みたいな。恒例の最後に載ってる漢文の書き下し文風な史書記述で、そこまでの小説の描写が全部削ぎ落とされて簡潔な文章になっちゃってるとか、逆に歴史の素っ気無い1文を展開していくとこれだけの長大な描写になるんだ、というダイナミズム、容赦無さがこの終盤であらためて強調された。

それで、柳はどうなったんだろう。戴の不思議な「病」と、柳の不可解な衰退と、なんか関わりがあるのかと思ってたんだけれど、別々の話なのかな。
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小野不由美「落照の獄」 - ねこまくら
「丕緒の鳥」小野不由美 - ねこまくら

本好きの下剋上 ふぁんぶっく4

ふぁんぶっくももう4冊目。そのうち電子版も出るでしょうけど、とりあえずはまだTOブックス通販のみのようです。
アニメの設定資料に香月美夜のコメントが付いてる。香月美夜書き下ろしSSは「魔力感知と結婚相手の条件」魔力感知って、初潮みたいなものなのね。いきなり異性を意識して戸惑うユーディットと、それを肴にガールズトークになだれ込むローゼマイン側近の女性陣。本好きSSの中でもちょっとテイストが変わった短編ですが、それでも話題が貴族女性の様々な立場の違いになっていくあたりが安定の香月美夜という感じ。鈴華の書き下ろしマンガは「リーゼの見習い先選び」アンソロ本にベンノとリーゼの見習い時代の話を描いてたけど、その更に前、リーゼがギルベルタ商会に見習いとして入るまでのお話。ベンノさん、本編ではリーゼの話ってほとんどしてくれないからねえ。波野涼「日帰り出張はツライよ」はイタリアンレストランで貴族を接待してると思ったらイキナリお貴族様に騎獣で連れ回されるという前代未聞の経験をしたギルド長さんの話。貴族の無茶振りは経験があっても、こういう振り回され方は初めてだったのでは。そして椎名優ゆるふわ出張版。
あとはドラマCD3アフレコレポートと、勿論椎名優のイラストギャラリーに設定資料など、そして恒例のQ&Aと今回も盛りだくさん。

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