香月美夜・勝木光「本好きの下剋上」第四部

第四部コミカライズ1巻。ついに二部・三部・四部の同時平行となりました。作画担当は週刊連載も経験してる実力者で、城での始まりの宴も子供部屋も、密度の高い絵で期待に応えてくれています。収録はローゼマインの目覚めから貴族院への出発まで。原作書籍だと115ページだから、単純に計算すると書籍版1冊の最後までいくのに4巻、第四部全体だと30巻以上、40巻近くなります。10年くらいはかかりそうです。
まあ主要キャラだけでも多い上に、モブでも名前のあるキャラが多いし、服装から調度品から世界観に合わせて細かく設定しないといけないし、情報量の多いマンガです。髪のツヤもリンシャン使ってるかどうかで変わるし、色々神経使いそう。でも、絵面はずらりと貴族が居並んだり華やかです。とりあえず、絵にすると、護衛騎士に囲まれて、レッサーくんで城の廊下を移動してるのがいかに異様な光景かというのが一眼でわかります。登場キャラもアンゲリカやブリュンヒルデ、フィリーネとお馴染みになる側近が揃ってくるし、シャルロッテめちゃ可愛いし。やっぱり四部はいいよね。
おまけSSはエラとの結婚を控えたフーゴの「空回りの警戒心」。下働き用の通路の話はユストクスのエピソードで出てきたけど、貴族院の厨房とかローゼマイン視点では出てこない話だから嬉しい。

【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部 「本のためなら巫女になる!1」 【マンガ】本好きの下剋上 第二部 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部 「本のためなら巫女になる!2」 【マンガ】本好きの下剋上 第二部 (コロナ・コミックス)

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【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部 「本のためなら巫女になる!4」 【マンガ】本好きの下剋上 第二部
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部 「本のためなら巫女になる!5」 【マンガ】本好きの下剋上 第二部

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【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部 「領地に本を広げよう!2」 【マンガ】本好きの下剋上 第三部 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部 「領地に本を広げよう!3」 【マンガ】本好きの下剋上 第三部 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部 「領地に本を広げよう!4」 【マンガ】本好きの下剋上 第三部

【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい! 1」 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい! 2」 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい! 3」 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい! 4」 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい! 5」 (コロナ・コミックス)
【マンガ】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい! 6」 (コロナ・コミックス)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 「本がないなら作ればいい7」

香月美夜・鈴華「本好きの下剋上」 - ねこまくら6
香月美夜・鈴華「本好きの下剋上」 - ねこまくら5
香月美夜・鈴華「本好きの下剋上」 - ねこまくら4
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香月美夜「本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜」 - ねこまくら
香月美夜「本好きの下克上」 - ねこまくら第一部兵士の娘

甘岸久弥・住川恵「魔道具師ダリヤはうつむかない」

魔道具師カルロの娘として生まれ、幼い頃から父と魔道具師の修行をしていたダリアには前世の記憶があった。魔道具開発と料理が何より好きなダリヤのラブコメ。なろう発職人系転生モノのマンガ化。前世記憶のチート要素は少なめ。二十数年分の人生経験はそれだけでもアドバンテージではあるけれど、前世知識は一応魔道具開発の発想のヒントにもなったりするけれど、主に料理方面で活用されている。父親が死ぬは、婚約者には裏切られるは、と話の最初の方で不幸が重なるけれど、その後はストレス軽めで、どんどん味方を増やしていく。書籍版は現在5巻まで、WEB版は連載中。細かい生活描写が丁寧で、脇キャラも豊富なので楽しめる。
魔道具開発は、マジカルな製作プロセスはあるけれど、基本は魔物素材の組み合わせなので、素材集めの苦労と試行錯誤でいかに話を回していくかになる。アクションシーンはあっても、サスペンス要素はほとんどない中で、あれこれ困難を設定して飽きさせない。スライムにこだわって探求していくのも面白い。それでも話が続いてくと、だんだん苦しくなってはくるけれど。いわゆるスローライフ系というやつなのか、そもそも大きな目的とか、敵とか、話の最終目標が見えないので、WEB版の先の方はむず痒いラブコメをどこまで楽しめるか、という感じになっていく。とりあえず元婚約者との因縁が決着するあたりまでは、夢中で読める。

シン・エヴァンゲリオン劇場版

見てきた。なんかすごく、腑に落ちた。理解した、ではなく、納得した、でもなく。テレビシリーズの終わり方、旧劇場版の終わり方、それぞれ叩かれてきたわけだけど、エヴァというのはそういう風にしか終われないんだということが伝わった、というか染み渡った。あと、宇多田ヒカル最高。

のの原兎太・溝口ぐる「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい」

エンダルジア王国は魔物が魔の森から溢れ出す「スタンピード」によって滅亡し、跡には巨大な迷宮が残された。錬金術師マリエラは仮死の魔法陣によってスタンピードを生き残ったが、ちょっとした間違いがあり、起きたのは200年後だった。200年の間に王国の都市は廃墟となり、迷宮討伐の拠点となる迷宮都市が迷宮の周囲を囲んでいた。そしてマリエラは迷宮都市唯一の錬金術師となっていた。
錬金術師は土地の地脈と契約することで、地脈から命の雫を引き出すことができる。魔物の土地となってしまった迷宮都市では新たに地脈との契約ができず、そして錬金術師が命の雫を使わなければポーションは作れない。そして使った命の雫と同じ地脈の土地でなければポーションは役に立たない。迷宮都市では、過去の錬金術師たちが作ったポーションの在庫が高額で取引されていた。マリエラは自身の安全のために錬金術師であることを隠しつつ、なんとかポーションの捌き方を考えて、穏やかに暮らそうとするのだけれど。
錬金術以外はいろいろ残念なヒロインのスローライフファンタジー、だけど迷宮討伐隊の迷宮攻略は熱いバトルで盛り上がったりもするし、後半は結構派手になる。スローライフどこいったという感じだけれど、ちゃんと最後は戻るので安心して下さい。書籍版は全6巻で完結していて、手頃な長さ。
架空の材料で作る架空のポーションのレシピとか、架空の材料で作る架空の料理とか、細かく描写して面白く読ませるのはすごい。原作は文章もしっかりしていて読みやすい。スローライフ系で、全体を構成してしっかりヤマ場を盛り上げて完結させてるのは実は貴重かもしれない。
ノリは割と少年マンガで、バトルの合間にもこまめにギャグが入る。男性キャラの平均年齢が高くて、女性キャラの平均年齢が低い気がするけど、ヒロインの周りをイイ男で固めてるなあ。原作小説は「小説家になろう」でも読めます。

フランシス・フクシマ「IDENTITY」

アイデンティティ政治の齎した自由民主主義の危機について。現在のアイデンティティ政治に至るまでの叙述の大半は人間理解の哲学史。ルソーからフロイトに繋がり、そっからシモーヌ・ド・ボーヴォワールにつなげていく展開が面白い。
ルソーが人間の内面に善なる本質を発見し、フロイトが理性に抑圧された隠された自己ー無意識を発見し、内なる自己の開放が幸福をもたらすという発想が生まれた。主観的な内なる感情をボーヴォワールは「生きられた経験」として重視する。主観的な感情が「自尊心」として注目され、それが狭小なアイデンティティの並列に行き着いた。
アイデンティティとしてのナショナリズムについても大きくページを割く。排他的に働いて対立を生んだ反面、ナショナリズムの不在は分裂と内戦に向かうことになる。
国民国家を統合させるナショナルアイデンティティが重要という結論。人種・宗教ではない、多様性に開かれた理念に基づくナショナルアイデンティティによる統合。つまり移民の同化政策が重要であり、自己完結したコミュニティが並立することは民主主義を脅かす。民主主義の体制は政府と国民の契約に基づいて成立し、双方が義務を負う。国民の範囲を確定し、国民が参政権を行使するのでなければ、そうした契約は意味をなさない。
これは契約説的な発想?国家と社会が競い合うという「自由の命運」の議論でも、分断された社会は弱体であるからやっぱり統合は必要ということになる。オランダ的、レバノン的なコミュニティの連合体では立ちいかなくなるという話。
しかし、立憲主義、法の支配、人間の平等といった理念は「価値観を共有する」先進諸国が共有する理念であり、アメリカをイギリス、フランス、ドイツとあるいは日本と分けるサムシングがアイデンティティになるのではないのか。それは理念というよりは文化的、身体的、形而下のモノなのではないのか。ハンチントン的なモノは否定できない。

杉浦次郎「ニセモノの錬金術師」

ニセモノの錬金術師(旧異世界でがんばる話)1www.pixiv.net
pixiv連載中、現在274話。チートスキルもらって異世界転生した男が、錬金術師として生きていく話。転生した後錬金術の師匠の下で修行してから独立し、魔道具を売りながら地道に暮らしていた主人公が、助手として奴隷を買おうとするところから始まる。とにかく話が面白い。出てくるキャラもうまく立ってるし、いい味出してる。錬金術と魔法と呪術とそれぞれが別の体系になっている設定も面白いし、それがまた話を膨らませてる。ただ絵が下書きというか、ほとんどアタリだけみたいなコマも多くて、新キャラがいっぱい出てくると誰が誰だか分からないこともあったりする。スキルはハンタハンタの念能力っぽいけど、うまく消化されてる。あと、助手になった奴隷の子がエロかわいくて有能。

橘由華・藤小豆「聖女の魔力は万能です」

仕事に疲れて帰宅したOL小鳥遊聖(セイ)が、いきなり異世界に聖女として召喚されてしまう。ただ、なぜか同時に二人召喚されてしまい、しかも召喚されたのは一人だけだと勘違いした王子によってセイはその場に置き去りにされてしまう。扱いに困った王宮の人たちから衣食住の世話はされるものの放置されてしまい、手持ち無沙汰なセイは物珍しさから入り込んだ薬草園の研究所でポーション作りを始める。元の世界に帰れるアテもないなら好きなことをしながらのんびり暮らそうかと思うのだけれど、どうやら本当の「聖女」は自分の方らしいと薄々気づいてしまう。面倒事は避けたいと目立たないようにするが、ついついやりすぎてしまい、あれこれと注目されてしまう。主人公は呑気というか肝が太いというか、呼びつけられて放置とか、散々な扱いにキレても、怒ってるのがめんどくさくなっちゃう。それよりポーション作りが面白そうとなるとのめり込んでしまうタイプ。召喚されたもう一人の「聖女」の方がなんか苦労してそうだけど、この子はあんまり出番がない。やたらとしっかりしてそうな、王子の婚約者と主人公と三人での絡みは結構楽しいんだけれど、女子会一回やって終わりなのかなあ。
異世界転生というのは、普通の女の子をイケメン貴族の中に放り込んで少女マンガをさせるのにピッタリな設定だというのを再認識させてくれる。王道だけど、スムーズな展開で、何よりキャラにあざとさが無くて読みやすいし話が面白い。わりとストレスフリー仕様です。原作は「小説家になろう」連載中、コミック版は5巻までで書籍版2巻相当。