映画「ゴブリンスレイヤー -GOBLIN'S CROWN-」

本日初日。原作5巻のアニメ化で、ほぼテレビ版の続きといった感じでいつも通りです。最近のアニメは劇場版だからって改めて人物紹介とかやらないのね。令嬢剣士役は上坂すみれ。60分だからテレビだと3回分ですね。バトルからバトルへと、テンポよくサクサク進みます。なんかテレビ版の方がエグかった気がする。やっぱ劇場版だとレーティングが厳しいのかしら。
後半ゴブリンの矢の脅威度が低いのは、ゴブリンが馬鹿の一つ覚えでグラグラの鏃ばかり使うから命中率も威力も下がるからだけど、ワンカットの説明だけではさすがにわかりづらいような。クライマックスは雪山の撤退戦だけど、救出した虜囚たちを抱えたゴブスレ一行が包囲されることもなく逃げ続けていけるあたりはちょっと絵的にも説得力が弱いような。

ゴブリンスレイヤー5 (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー5 (GA文庫)

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<追記>
発売延期だったプログラムが発売されたので買ってきた。165円とえらく高かった。中は声優グラビアどーん、という感じで、ゴブスレ役の梅原裕一郎、女神官役の小倉唯、ゲストキャラの令嬢剣士役上坂すみれのインタビューがフィーチャーされてました。監督と原作者蝸牛くもの対談も載ってます。絵とか設定とかのページがほとんどなくて声優フィーチャーになってたけど、ゴブスレって声優ファンが多いのだろうか。あまり見ない構成な気がするんだが、発売延期になったことと関係あるんだろうか。
声優インタビューにしても、監督と原作者の対談にしても、結構突っ込んでるというかぶっちゃけてて、読みでがあった。そうか、キャスト表のほとんどがゴブリン役なんだ。

テッド・チャン「息吹」

息吹

息吹

寡作で有名なテッド・チャン17年ぶりの第二短編集。自由意思と決定論、信仰と科学、生命倫理など、これまでも繰り返し語られてきた葛藤を、新たな技術や知見を組み込んで鮮新な物語とした。凝縮した、濃密な、今まさに読まれるべきSF。例えば、避けられない悲劇的な運命を知ったときにどう考えるのか、あるいは過去の悲劇的な経験とどう向き合っていくのか、これは前著「あなたの人生の物語」でも語られたテーマであり、本作品集の中でも、色々と形を変えて繰り返し語られる。本書中でも短い「息吹」「大いなる沈黙」では、滅びへと向かう自らの宿命を見据える、人間以外の知性による語りが鮮烈な印象を残す。最も短い「予期される未来」は、予め決まっている未来を覆そうとして果たせない自由意思という息の詰まるテーマを追求する。また、「不安は自由のめまい」では、過去の選択を悔やみ、あるいは正当化する人たちの、それぞれ多数の並行世界の「あり得た自分」達との会話から、自身の過去との向き合い方が描かれる。「偽りのない事実、偽りのない気持ち」では、現在に合わせて過去を書き換えられる口承文化と、デジタルなライフログを常に参照する「完全な記憶を持った」人格との対位が語られる。収録作中最も長い「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」では、任意に過去の状態に巻き戻されて、その間の経験が一切なかったことにされるAII人格が描かれる。
もちろん、それぞれの短編は、ただ一つのテーマを追求している作品ではない。「息吹」ではエントロピーを気圧差で表現する凝った仕掛けが何より魅力的なイメージを提供している。「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」で描かれる成長するAIの訓練と共生は、ある面ではペットの飼育に似て、ある面では子供の教育に似て、そしてある面では、どれとも似ていない。そして全ての作品が、豊かに詩的であり、面白いドラマであり、答えのない問いを投げかけている。
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劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明

本編上映前にマルルクちゃんのショートムービーがあります。マルルクちゃん可愛いです。週替わりだそうです。ボンドルド篇を毎週見ろ、と。なんかもう、ナナチが、ちくしょう、本当に楽しいなあと呟くあたりからもう目が潤んでくるというのに。プルシュカはずっと健気だし可愛いし。桟橋での別れのシーンの切なさったらないです。なんかメイドインアビスって、TVシリーズも含めて、声優さんの演技の深さに震撼するアニメだと思います。
特に何の説明もなく、不屈の花園のクオンガタリのエピソードから始まります。いきなり気色悪いです。一応プログラムにテレビシリーズの粗筋は書いてあるけど、少なくともアビスの呪いとかミーティとか知らない人はいない前提ですね。話はほぼ原作に忠実に進んでいきます。ボンドルドの説得力がすごいですね、これだけ異様なキャラを演じる森川さんの声が聞けるのは素晴らしい。後半はレグ対ボンドルドの息もつかせぬバトルアクションの連続です。
音楽も、綺麗なメロディの中に、何か不穏な引っ掛かりがあったりして、期待を裏切らない力作でした。

蝸牛くも「鍔鳴りの太刀」ダイ・カタナ

ゴブリンスレイヤー 外伝。本編の10年前、剣の乙女がまだ駆け出しの冒険者だった頃の、死の迷宮に挑んだ冒険者たちの物語。真っ向からのWizardry小説です。キャラはやはり女戦士とか半森人の斥候とか、固有名詞は出てきません。でも主人公のサムライは「君」です。「君は冒険者となったのだ。」とか言われちゃうわけです。といってもキャラ的にはイヤーワンの、駆け出しの頃のゴブスレさんと印象は近い感じ。重い過去こそ背負ってないみたいだけれど、寡黙で生真面目な様子。実はけっこう軽口も叩いてるんだけれど、主人公のセリフだけ地の文で表現されているので、一際落ち着いた印象になってます。
なんだかものすごくニッチな気がするんだけれど、1周回って新鮮、だったりするんだろうか。思いっきり気になる導入のあと、サクサクとパーティーを組んで、テンポよくゲームを進めていきます。でも、魔王に届くまではまだ随分ありそうだけれども。

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

2016年公開の「この世界の片隅に」では削られた原作のエピソードが追加されたことで、物語の切り口を変えた別の映画となっています。戦時下の日常系コメディという部分は変わりませんが、遊郭のリンさんとの絡みが前面に出てきたことで、後半は周作の妻としてのすずさんの側面が大きく語られることになります。戦時下の淡々とした日常に空襲とか原爆とかが襲いかかってきて、破壊していくわけですけれど、夫の「昔の女」の影であるとか、強烈な台風であるとか、日常を脅かす非日常というのは戦争ばかりではないわけです。世界はいろんな出来事からできていて、その中で生きているすずさんもいろんな面を持っています。そうした多層的な厚みを得て、戦争を時代背景としたすずの一代記であり、北条家の人々を描いた大河ドラマの一部であり、呉の人々の物語の一部でもあるというような、今ここにいる自分に繋がってくる回路が増えたように思います。
戦争中の日常パートは、戦時下あるあるネタがいろいろ入ってるらしいけど、観客のほとんどがわからない、とか聞いた。でも、なんか前作の公開時に、何人かで映画館に見にきてえらい受けてたおばあちゃん達がいたとか。それを聞いた片渕監督が、「間に合った」と言って、涙流して喜んだとか。何より、実際に戦時下の生活を経験した、その世代の人たちにこそ、届けたかったのでしょうね。
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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。

夕蜜柑の同名小説のアニメ化。オンラインゲームで、初心者ゲーマーの防御力特化の偏ったステータスのキャラが、たまたまとった行動がハマって異次元進化してく話。原作の雰囲気を壊さず、テンポよく見れる。ただ、テンポを崩さないために、ゲーム内チャットとかどんどんスクロールしてって読む暇がない。もともと原作はパラメータ小説というか、今のステータスはこんなです、こんなヘンな事してたらこんな条件を満たしてこんなスキルが取れました、こんなスキルをこんな変な使い方してます、みたいなところが細かい小説だったが、話のテンポ優先でそのあたりの説明を全部流しちゃっている。原作ファンならストレスなく楽しめるけれど、アニメだけ見たら、えらく御都合主義な結果だけが印象に残る懸念が拭えない。
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空挺ドラゴンズ

飛行船で、捕鯨船みたいに、空飛ぶ龍を追いかけて捕まえるオロチ取りの話。ネトフリで一挙配信してます。今期は気になるアニメが多いなあ。
とりあえず1話見たけど、ダイナミックでカッコいい。手すりも何もないムキ出しの甲板の上で吹っ飛ばされたりすっ転んだりするから、見ててヒヤヒヤします。原作の1話がアニメ1回分に自然に収まってる。手書きっぽいとこと3DCGっぽいとことあって、細かく使い分けてるのかな。もうちょっと汗臭そうでもいいと思ったけど、あんまり絵面を汚くできないのかな。ミカとかもっと薄汚い印象だったけど、えらいスッキリしてる。

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